「ほんとうは飲んじゃダメですけど」とこぼす、ほろ酔いの女性

 0-0で迎えたハーフタイム。この時点で、他会場ではオランダがチュニジアに2-0でリードしており、日本が1位通過を決めるには、最低でも3点が必要となる。残り45分で3点。絶望的とも言える厳しい戦いが予想されるが、果たしてどうなるか。

 パブリックビューイングの熱気を取材しようとバーに移動すると、「身バレが怖いから写真は絶対やめて」と念を押す、近隣のオフィスで働くエンジニアの女性が取材に答えてくれた。朝の9時台だというのにすでにほろ酔いの彼女は、「出社前に前半だけ観に来ました。ほんとうは飲んじゃダメですけど、今日はね、上田のゴールを祝って、1杯だけ」とメスカルをペロリとなめた。なお、試合はすでに後半5分に差し掛かっていた。

皆が真剣にサッカーを観戦している

 店内は筆者の予想を裏切り、みなが異様なほど真剣にサッカーを観戦していた。泥酔した若者がチャントを大声で歌うような状態ではなく、全体的にはじっと戦況を見つめている。そして、チャンスが訪れると店内が突如として一体となり、「うぉー!」「いけっ!」といった野太い歓声が地鳴りのように響き、惜しいプレーには自然と拍手が巻き起こる。活躍した選手の名を連呼し、心から勝利を願う“本物”のサポーターたちの姿がそこにはあった。

ADVERTISEMENT

動き出すスクランブル交差点周辺の光景

 時計の針が9時30分(後半開始20分が経過)へと向かう頃、沿道の機動隊車両から大勢の警察官が続々と交差点へと向かい、次第にスクランブル交差点周辺が物々しい空気に包まれ始める。

9時30分へと向かう頃、交通規制の準備を始める警察官

 とはいえ、ハロウィーンやカウントダウンのあの異様な空気ほどではない。あちらは無法地帯を力で制圧するような雰囲気だが、今回の規制はスクランブル交差点周辺のみに限られており、立ち止まりが厳しく禁止されているわけでもない。コンビニの酒類販売も通常通り行われていた。

試合が終わると…

 そして、試合終了のホイッスル。近隣の店舗で試合を見終えたサポーターたちが続々と集まり、横断歩道が青になる瞬間を今か今かと猛獣のように待ち構える。

「走らずにお願いします! 走らずにゆっくり進んでください!」

 交差点からセンター街に向けて、DJポリスならぬ警察官の声が響き渡る。

交差点に向けて走り出さないように注意する警察官

 しかし、そんな静止はむなしく、信号が青に変わった瞬間、渋谷は一瞬にして狂乱の坩堝と化した。

走り出す代表サポーター
狂乱の渦と化したスクランブル交差点

 ハイタッチ、ハグ、雄叫び。熱気に当てられながら、少し道を外れて代表サポーターたちの生の声を聞いた。