風太(ふうた)。オスのレッサーパンダだ。千葉市動物公園(千葉市若葉区)で暮らしている。2歳の時、2本の後足で立つ姿が有名になり、缶コーヒーのCMにも登場した。ひと目見ようと来園者が押し寄せ、展示場の後ろからでは見えないほどの人気ぶりだった。あれから20年以上が経ち、風太は国内で飼育されているレッサーパンダとしては最高齢になった。2026年7月5日で23歳になる。しかも、同園では今なお絶大な人気を誇っている。どうして元気でいられるのか。老いても人気の理由は何か。秘密に迫る。(全2回の1回目/つづきを読む

風太は小屋で横になる時も顔を外にのぞかせることが多い。人気の秘密だ 撮影=葉上太郎

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午前8時に起きると朝のお散歩

 風太の一日は午前8時頃に始まる。朝、担当飼育員の伊藤泰志さん(61)が寝室をのぞくと、寝ていることもある。

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「飼育下では本来の生態と違うのかもしれません」と伊藤さんは言う。レッサーパンダは薄明薄暮(はくめいはくぼ)性だ。昼行性や夜行性ではなく、薄明の明け方と薄暮の夕暮れに活動するのである。天敵から身を守るなどするためだという。

 起きるとリンゴや煮たサツマイモだけの簡素な朝食を摂る。午前9時頃に屋外展示場に出て、まずは数十分の散歩だ。お決まりのコースがあり、そこだけは草がはげて土の道ができている。一歩一歩、確かめるようにして歩く姿には、老いを感じざるを得ない。5年前に取材した時からは、やはり衰えた。

風太、日課の散歩でドクダミの花の中を歩く

 観察していると、「あれっ」という素振りを見せて立ち止まった。顔に草が当たったようだ。クンクンと匂いで確認し、また歩き始める。

 風太に身体機能の低下が見え始めたのは2019年頃だ。右目が白内障になり、体の動きが緩慢になった。既に16歳。老境に入っていた。

 公益社団法人「日本動物園水族館協会」(JAZA)によると、「飼育下のレッサーパンダは平均寿命が約12年。生後間もなく死亡した個体も含まれていて、近年では20歳ぐらいまで長生きする個体もいます」とのことだ。動物の年齢を人間に換算することはできないが、それでもあえて比較すると、23歳になる風太は人間の100歳どころではないのかもしれない。

もう目はほとんど見えていないが…

 このところは左目もあまり見えなくなったようだ。伊藤さんは「歩いていて物に当たることがあります。風太の頼りは鼻と耳です」とやや心配げだ。

 それでも、かなりの坂になっている屋外展示場を歩き回る。老いたりといえども、たいしたものだ。

「あれっ、散歩コースに人がいる」。立ち止まって見上げる風太

 ひとしきり歩いた後は展示場に置かれた小屋で横になる。再び活動を始めるのは午後1時半、伊藤さんら担当飼育員が餌を与えながらガイドを行う頃だ。その後は休んだり、歩いたりした後、閉園時間の午後4時半より早くに、自分から屋内へ入る。そして夕食だ。

「風太は寝ている時間が長くなりました。レッサーパンダはそもそも寝る時間が長いのですが、風太は年齢のせいか他の個体よりよく寝ています」と言う。