お昼ご飯の時間は人だかりができる
毎日午後1時半になると、昼食を与えながらガイドをしているのだが、風太は屋外展示場の小屋に寝そべっていても、その前になると出て来て黒山の人だかりになる。
「単にお腹が空いているだけなんですが」と伊藤さんは笑う。テレビ取材のチームが来た時、なかなか屋外に出なかったことがあった。それでも、最後はきちんと姿を見せ、歩き回っているところを撮影させた。「期待に応えてくれるんです。カメラを持っていたら、目線を合わせたりして。人間を勘違いさせてしまう子なんですよ」と愛おしそうに説明した。
「賢さとプライドの高さ」に惚れた人もいる。「飼育員の考えや行動が分かっているかのようで、寝室に帰る時間になると、屋外展示場の小屋からすっと出て来て、屋内に入ります。いやだと思ったらハッキリNO。こうだと思ったら自分を貫くのも魅力」という声を聞いた。
高齢なのに一生懸命歩いている姿に…
他の個体が寝そべっていても、風太は来園者の目の前で歩き回ることが多い。これがまた人の心をつかむ。
ファン歴8年の女性は「もう23歳なのに歩き回るんです。平坦に見えるけど、展示場のスロープは凄い坂です。老いて体力が落ちているから危なっかしい時もあります。高齢なのに一生懸命歩いている姿に皆さんがキュンとなる」と話す。
ファン歴5年の男性は「自分もああなりたい」と憧れる。老いても健康で歩けるというだけではない。「多い時には200人も300人も集まります。人間は高齢になると怒りっぽくなる人もいるから、嫌われることがあるじゃないですか。下手をすると男性は邪魔者扱いです。どうせなら風太のようにかわいく年を重ねたい。そして好かれたい。人間で言ったら泉重千代さん(鹿児島県徳之島に住み、1995年まで世界最長寿としてギネスブックに載った男性)とまではいかなくても、きんさん・ぎんさん(107歳、108歳まで生きた名古屋生まれの双子姉妹)クラスの高齢ではあるでしょう。そんな年齢になるまでカワイイだなんて、うらやましい限りです」と話していた。
それだけではない。「推し活の重要性も教えられました」と言う。「高齢になっても女性は教室に通ったりして趣味を見つけますが、男性は孤立しがちで生活範囲が狭くなります。でも、『推し』があれば外出できるし、ここでのようにファンの知り合いもできます。『推し』は年を取ってからも、特に男性には大切なんだなと痛感しました」としみじみ話していた。



