マイケル・ジャクソンの偉大さは、生み出した「発明」の数々が多大な影響を与えすぎて、もはや現代の人々には「常識」として受け止められてしまっていることにあるだろう。ここでは日本の歌謡曲、ことにアイドル歌謡に与えた影響についてを読み解いていく。
ジャクソン5とフィンガー5~バブルガム・ポップスとアイドル歌謡
マイケル・ジャクソンが日本の音楽シーンに与えた影響は、果てしなく大きいものがある。
まずはジャクソン5の影響をストレートに受けたグループに、フィンガー5がいる。
兄弟5人組という点が大きいが、もともと彼らは「オールブラザーズ」の名で、沖縄で洋楽をカバーするバンドとして活動していた。上京し「ベイビー・ブラザーズ」と名乗りメジャーデビューするが、この時点ではモータウン系ソウルグループのイメージはまだない。
彼らが化けたのはミッキー・カーチスに見出されレコード会社を移籍してからのこと。ここでジャクソン5を意識したグループ名「フィンガー5」に改称、73年にリリースした「個人授業」が爆発的にヒット。アメリカのハイスクールの生活を歌ったかのような世界観、アクティヴなダンスパフォーマンスで幼稚園・小学生層に絶大な人気を誇った。兄弟で組んだキッズ・グループとしては日本で最大の成功例であるが、彼らのファースト・アルバム『個人授業/FINGER 5 FIRST ALBUM』には「帰ってほしいの」「小さな経験」「ベンのテーマ」などジャクソン5及び少年期マイケルの曲がカヴァーされている。
こういった少年少女をターゲットにした楽曲は、日本ではアイドル歌謡と呼ばれたが、アメリカでは「バブルガム・ポップス」と呼ばれた。ジャクソン5のライバルだった白人兄弟グループのオズモンド・ブラザーズが代表的だが、ジャクソン5はそのブラック・ミュージック版で、モータウン内のキッズ・グループという位置付けでもあった。
そんな彼らのサウンドを取り入れたのが、1972年デビューの郷ひろみである。
この時期ジャニーズ事務所(現:STARTO ENTERTAINMENT)の所属だった郷ひろみは、2作目の「小さな体験」で、ジャクソン5を意識した歌謡R&Bを発表している。タイトルからして「小さな経験」からのインスパイアだが、筒美京平の曲想もモータウン的な、垢抜けたシティソウル。筒美がこういうモータウン、スタックス系のサウンドを取り入れるのは、60年代の人気GS、オックスの「ダンシング・セブンティーン」やジャガーズの「星空の二人」あたりが最初だが、アイドル的なアプローチで成功したのは郷ひろみが最初だった。



