イギリス、アメリカ、日本を結ぶもの
ブレイディ はい。彼はイギリスのラストベルトのような北部で、労働党の政治家にしては珍しく人気があるんです。コロナ禍の時など各都市の市長と連携し、政府に追加支援を出させたりして「キング・オブ・ザ・ノース(北部の王)」と言われるくらい人望がある。今年初めにライバルのスターマー首相に国政に出てくるのを阻止されましたが、今回の地方選の大敗を受けて党内外でバーナム待望論が盛り上がり、ついに下院の補欠選挙に出馬します。
ここ数年、スターマー首相は“左派切り”を推し進めてきました。前党首のコービンを粛清し、映画監督のケン・ローチのような左派をどんどん追放してきたので、ピュアな左派の人たちは今の労働党が大嫌いです。現労働党なんて解体してしまったほうがいいという人たちまでいる。ただ、私は移民の当事者だから、そこには同意できない。排外主義で厳しい移民政策を掲げるリフォームUKに政権をとられたら、それこそ一家離散の危機ですから。
内田 排外主義の高まりは世界的なトレンドですが、どこでも深刻さを増していますね。先日、アメリカ在住の映画評論家・町山智浩さんとオンラインでお話ししたのですが、町山さんは日本への一時帰国すらままならないそうです。トランプ政権の移民排除政策で、過去にわずかでも法律違反があると再入国できないかも知れない。小切手の残高不足や交通違反程度の微罪でも入国拒否・強制送還のリスクがあるので、怖くて試せないそうです。
日本でも「日本人ファースト」が声高に叫ばれ、入管法を厳格化し、永住許可の取り消し要件を拡大するなど移民排除の空気が強まっています。ブレイディさんの本にある「家産制国家」という分析はイギリス、アメリカ、日本で起きていることの核心を突いていると思いました。
ブレイディ 「家産制国家」とは社会経済学者のマックス・ヴェーバーによる、家父長制的な支配構造をもつ国家形態を指す概念ですが、支配者が国家を家業のように扱う点に特徴があります。
※約9500字の全文は、「文藝春秋」2026年8月号と、月刊文藝春秋の電子版「文藝春秋PLUS」に掲載されています(ブレイディみかこ×内田樹「壊れゆく世界への抵抗」)。全文では、以下の内容についても語られています。
・選挙で堂々と嘘をつく政治家たち
・「自己責任」という言葉の起源
・「サル化」する社会


