7月10日に誕生日を迎えた前田敦子。7年間在籍したAKB48を21歳で卒業すると、俳優として存在感を示していく。35歳になった彼女の“現在地”は……。(全3回の3回目)
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映画の世界で開花させた才能
映画の世界では、何人もの監督が前田敦子に可能性を感じて、AKBの卒業前後より作品に起用してきた。彼女をヒロインに『苦役列車』(2012年)を撮った山下敦弘監督は、同作の公開初日に新たな映像作品への出演をオファーし、これがその後『もらとりあむタマ子』(2013年)へと発展している。
黒沢清監督は2013年に公開予定だった長編映画のヒロインに前田を抜擢したが、制作中止となる。そこで、直後に秋元康が前田のソロシングル「セブンスコード」(2014年)のミュージックビデオの制作を黒沢に依頼、ロシアで撮影を行ったこの作品は、映画『Seventh Code』(2014年)となり、ローマ国際映画祭のインターナショナル・コンペティション部門で最優秀監督賞と最優秀技術貢献賞も受賞した。
黒沢はその後、『旅のおわり世界のはじまり』(2019年)でも彼女を主演に起用、このときはウズベキスタンでロケした。彼女の役はテレビ番組の取材で同国を訪れたレポーターで、劇中、知らない街をさまよう様子はまるでドキュメンタリーを思わせた。しかし、映っているのは前田の素ではないという(『キネマ旬報』2019年6月下旬号)。
黒沢は脚本の執筆時には具体的な俳優をイメージしないと公言しているが、このときは例外的に、早い段階で主演に前田を考えていたという。それというのも、現地の劇場でヒロインを歌わせると決め、誰にやってもらうかと考えたとき、即座に前田が浮かんだからだった。
さらに同作のラストでは、標高2000メートル超の山頂で歌うシーンが用意された。酸素の薄い高山で歌うのはかなり無茶である。しかし黒沢は、AKB時代に彼女が培った粘り強さに賭けた。映画公開に際して次のように振り返っている。
《最初から飛ばしすぎると、もう歌えなくなっちゃう。だからペース配分は最後の盛り上がりまで体力を温存しなければいけない。そこは元AKBのセンター。執念で乗り越えました。「次は絶対もっとうまく歌えると思うので、もう一回やらせてください」って一番真剣でした》(『キネマ旬報』前掲号)

