アイドルには人の心を動かす力がある

 近年は、年下の俳優やスタッフと仕事をすることも増え、前田がAKBにいたころに秋葉原の劇場に来ていたとか、ブロマイドを買いに行ったという話を聞かされては驚いているという。AKBにいた当時は台風の目のなかにいたような感覚で気づかなかったが、アイドルには人の心を動かす力があると、いまさらながら感じているようだ。

卒業セレモニーが行われた2012年8月「AKB48 in TOKYO DOME ~1830mの夢~」での前田敦子 ©文藝春秋

 AKBを卒業してから間もなく14年が経とうとしている。AKBに在籍したのは7年足らずなので、すでにその倍以上の月日が流れたことになる。しかし、5年ほど前の対談で、常に闘っていたAKB時代を顧みて《でも、おかげで心の体力はついたので、今は生きやすいですね。あの苦労は、今となっては絶対できないので感謝しかないです》と語っているように(「LEE」ウェブ版2021年4月6日配信)、彼女にとってあの約7年間がかけがえのない時間だったことに変わりはない。

 俳優としてはあまり緻密に積み上げていくタイプではなく、セリフも家で形にするとそこから崩せなくなるので、口にするのは現場に入ってからと決めているという(『anan』2024年2月7日号)。生き方についても同様に、人生設計はしないタイプであり、《⾃分をこういう⼈だとか、こういう職業、こういう役者だって、⾃分で作りたくないんです。そういう肩書きみたいなものを、外から作ってもらえちゃうお仕事でもあると思うんですよ。だから、⾃分で型にはまりたくないと思っています》と話す(「NEWSポストセブン」2026年2月17日配信)。

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 この発言を読むと、彼女がAKB時代、センターに固定されることにずっと抵抗していたことを思い出してしまう。しかし、それでいて彼女は、センターを任された分、常にグループのことを考えて行動していた。型にはめられることへの抵抗と従順と、前田敦子は今後もそのあいだで揺らぎながら、そのときどきの人との出会いもあいまって変化していくのだろう。そんな予感を抱かせる。

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