「役のために自分を駄目にしては駄目なんだよ」

 このように、前田はAKB卒業後も、よりよい演技を目指してがむしゃらになりがちだった。ただ、野田秀樹作・演出の舞台『フェイクスピア』(2021年)に出演時には、そうした姿勢を反省させられるできごとがあった。

 この公演中、肋間痛になってしまった彼女に、共演していた大ベテランの橋爪功が楽屋で「敦子、お前はもう十分に人に伝わるお芝居をしてるから、今以上に声を出すな」と言ってくれた。さらに「役者というのは、役者の役をやるために生きてるのではなくて、普通に人として生きてるんだ。だから、役のために自分を駄目にしては駄目なんだよ」と助言される。このときの橋爪の言葉はその後もずっと彼女の心に残っているという。

現在84歳の橋爪功 ©文藝春秋

《頑張ることは確かに良いことではありますが、橋爪さんの言葉を聞いて、がむしゃらになりすぎるのは良くないことだなと冷静になれたんですよね。「役者も役をやるために生きるな」と言われた時に、もう少し客観的に判断できる、器用な人になりたいなって、すごく思いました。「優しい!」とも思いました。すごくまっすぐに言ってくださったその言葉にすごく感動しましたし、一生忘れないと思います》(『AERA』2023年3月27日号)

27歳で結婚し1児の母に、離婚も経験

 私生活では、27歳となった2018年7月に同業の勝地涼と結婚している。かねてより20代のうちに子供を産みたいと公言してきたとおり、翌年、男児を儲けた。出産を報告した2019年3月4日は、奇しくもAKB時代に「10年後にまた会おう」と歌ったシングル「10年桜」のリリースからちょうど10年を迎えた日で、ファンのあいだで話題となる。

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 結婚生活には結局3年でピリオドを打ったものの、勝地とは子供の両親としてタッグを組むことは変わらず、むしろ別れてからのほうがうまくいっているという。