「彰悟さんが大変なことになっています!」

 DF・谷口彰悟の“伝説”が誕生したのは、2010年3月、熊本県立大津高校の卒業式のことだ。

高校時代は“大津の心臓”と呼ばれた

 突然出番が回ってきた。6月26日のスウェーデン戦、キャプテンのDF・板倉滉の怪我により、前半39分から、急遽ピッチに立つことになったのだ。

「準備時間は2、3分しかなかったが、中央で守備陣をコントロール。MFの前田大然の先制点も、起点は谷口のボール奪取から。ブラジル戦でもフル出場した」(スポーツ紙記者)

谷口彰悟 ©時事通信社

 川崎フロンターレで4度のリーグ優勝を経験、25年からベルギーのシントトロイデンで主将も務める。今大会で2度目のW杯となる谷口は、端正な顔立ちゆえ、昔から注目の的だった。

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 高校時代はボランチとしてチームをまとめ、“大津の心臓”と呼ばれた谷口。普段からその姿を一目見ようと、下級生が教室を覗きに来るほどのモテ男だった。

卒業式、記念撮影したい生徒で行列ができていた

 大津高サッカー部では、卒業式の日、卒業生を後輩が送り出すセレモニーがある。だがその年、主将だった卒業生の谷口は、予定時間になっても、会場の体育館脇に姿を見せなかった。

「ちょっと呼んで来い」

 平岡和徳監督(当時)から命じられたのが、のちに筑波大、川崎フロンターレでも谷口のチームメイトとなる1学年下の車屋紳太郎氏だ。谷口のクラスを訪れると、驚異の光景を目にする。車屋氏が振り返る。

「教室前に、長蛇の列ができていました。彰悟さんと記念撮影したい生徒が順番待ちをしていたんです」

 女子生徒だけでなく、保護者まで並ぶ異常事態。同行した別の後輩は引き返して冒頭のように報告した。

「僕はとっさに列を整理しながら、撮影係もやりました。彰悟さんは嫌な顔ひとつせず、律儀に全員と記念撮影していました」(同前)