「サムライ、今から出発だ」
志願兵になってからは逸る気持ちを抑えられず、3~4回ほどタイミングを見計らって突撃装備に着替えて作戦の待機場所で待った。だがいずれも、出撃の号令はかからなかった。
いつ出発するかもわからない状況が続くなか、志願してから丸3日が過ぎた11月25日の深夜0時過ぎ、僕は寝床で眠りにつこうとしていた。そんなときに、突然叩き起こされた。
「サムライ、今から出発だ」
仲間の兵士からそう告げられた。あまりにも唐突で、少し返答に詰まる。寝ぼけながら5分で準備をして車両に乗り込んだ。
同乗していた上官に作戦について聞くと、彼はこう語った。
「サムライ、いいかい? 僕は君に死んでほしくない。だから、君の単独作戦は中止した。右翼から突撃するワグナー(ワグネル出身の兵士)の9人と一緒に行動してくれ」
朝4時頃に目的地の近くでワグナーと合流し、車両を下車。真っ暗闇のなか、ロシア陣地内の高速道路沿いの土手の下をウクライナ軍に悟られないよう徒歩で移動する。敵軍の要塞に近づくにつれて、高速道路沿いの土手は徐々に高さを増した。
やがて土手は3mほどの高さになった。ここを乗り越えて高速道路を横切れば、ウクライナ側の要塞を見通せる場所に辿り着く。だが、こちらが見渡せるということは、向こうからもこちらの行動が丸見えということだ。
「ここからは匍匐前進で移動する」
上官が告げると、10人は土手をダッシュで駆け上がり、身を隠すように屈んだ。ついに突撃の火蓋が切られたのだ。
あらゆる砲弾、銃弾が飛び交った。
頭を地面に伏し、音を殺しながら敵地を目指す。匍匐前進で100mほど進んだところで、真っ暗闇が昼間かと思うほど明るくなった。要塞近辺に設置されたサーマルカメラやナイトビジョンの映像は基地内でモニタリングされており、我々の動きが監視されていたのだ。ウクライナ軍の要塞から、あらゆる兵器の銃弾や迫撃砲による爆撃が雨霰のように降ってくる。
キューン! キューン!
