「日本人! 先頭に行けるか」

 銃弾が頭のわずか上や顔の真横を掠めて飛んでいく。戦争映画の描写は実戦と異なる偽りばかりだが、銃弾の効果音はまったく同じであることに驚いた。顔の真横を銃弾が飛んでいくと、空気を切り裂く音が「キューン」と鳴る。だが、凄まじい攻撃を受けるなかで、僕は奇妙なほど冷静でいられた。

 すると、突撃隊の上官が怒鳴り声を上げた。

「おい、日本人! 先頭に行けるか」

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「当たり前です!」

 匍匐前進で皆を抜かし、先頭に向かった。そのとき、隣にいた仲間が大声でうめき出す。夜中だが絶え間ない銃撃と爆撃により、周囲は明るい。

 彼は膝立ちになって顔面から蛇口を捻ったように血をドバドバ流していた。よく見ると左目の眼球が飛び出て神経にぶら下がり、口元でぶらんぶらんと揺れている。あらゆる兵器が使用されていたから彼が何で負傷したかさえわからない。

 ロケットランチャーを持っている兵士たちが彼を取り囲み、眼球を中に戻して包帯でぐるぐる巻きにした場面までは見ていた。司令官から「先頭に行け」と指示されていたから、まずは匍匐前進で先頭に立つことを優先した。

 実は、この判断も難しい。負傷兵が応急処置によって命を取り留める可能性がある場合、彼の救助が優先事項なのか、それとも突撃を成功させるために1秒でも早く敵との交戦距離まで進むことが大事なのか。

 僕はこのとき、とにかく先頭に行き、部隊を進行させることを優先させた。戦闘を終えて毎回後悔するのが、そのときの判断は本当に最善だったのか、ということだ。瞬時の決断を求められ、いつも答えがない。この突撃作戦では、とにかく部隊を要塞まで導いて、敵と交戦しなければならない。その使命感だけで突き進んだ。

 どのぐらい時間が経ったのだろうか。戦地で極限の戦いをしていると時間の感覚さえ失う。敵の要塞までの残り400mを先頭で進んだ。その間にも味方が次々と撃たれて倒れていく。