匍匐前進で腕が擦り切れ、肉体的な消耗も激しい。敵の要塞まであと少しだった。目の前の高速道路の土手を越えれば、敵がいるはずだ。

手榴弾がコロコロと右横に…

 土手に身を隠しながら、ワグナーの一人とタバコに火をつけて一服し、汗を拭った。

「これを投げてくれ。爆発したタイミングで、俺が一気にこの土手を越えて敵の方向を君に知らせるから」

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 5m離れたところにいた彼にそう伝え、手榴弾を手渡そうとしたときだ。敵の手榴弾「RGD-5」がコロコロと僕の右横に転がってきた。集中力を完全に欠いていた。予期しない攻撃に、時が止まって周りがスローモーションになる。手榴弾は足元で止まった。

 その瞬間、走馬灯を見た。脳裏に浮かんだのは、30年近く前、アパートでガス爆発を起こした「タクロー」という後輩の顔だ。

 タクローはガスの元栓を開けたままタバコに火をつけ、アパートの屋根と壁を吹き飛ばすほどの大爆発を起こした。彼は全身大火傷を負いながらも奇跡的に一命を取り留めた。その爆発の場面を僕に説明するタクローの映像が頭に浮かんだ。

 同時に、事前に学んでいた軍事知識も頭のなかでリフレインしていた。

「爆発物は中心に近いほど威力が弱く、中途半端な距離が一番ヤバい」