被弾した頬を触ると…

 慌てて顔を背けたが、まったくもって遅い。真横で爆発した衝撃が、世界を無音にした。右頬に大きな衝撃を受けて死を覚悟したが、爆発から数秒して思考している自分に驚いた。

〈俺はまだ生きてるのか?〉

 被弾した頬を触ってみると、何かが刺さっている。脈を打つようにドクドクと血が溢れ、それにより自分が生きていることを確認した。不思議と顔に痛みはない。ないからこそ、顔が破壊されたと感じた。

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 負傷した僕を見た仲間たちは、作戦は終了だとばかりに顔を見合わせている。

「もうダメだ。戻ろう」

 ロシアの冬は夜明けが遅いとはいえ、地平線から陽が見える。時刻は午前10時頃だろうか。修羅場を潜り抜けてきたワグナーたちでさえ、撤退という選択しかなかった。

 撤退を決めると、負傷していない兵士らは土手を下り、走って野原を突っ切った。眼球が飛び出した兵士も両脇を2人の仲間に抱えられて戻っていく。

 僕はと言えば、手榴弾の被弾によって腰が上手く動かない。足が動かず、呼吸も乱れて走るのが難しい。

「サムライ、どうする? 行けるか?」

 ワグナーの一人はこう気遣ってくれた。

「大丈夫、先に行ってくれ。俺は後から戻るから」