西村 私は2018年に台湾大学に1年いましたが、そこでお世話になった先生が研究の過程でリー・シン監督と知り合い、大変親しくされていました。で、今度、お食事会をやるから来ない? って誘われたわけです。行ってみたらなぜか私はリー・シン監督にめちゃめちゃ気に入られました。おそらく中国語を話す珍しい日本人がいるぞ、という風に思ってくださったんではないかと思います。雰囲気としては台湾映画界のゴッドファーザーですから、威厳はすごくありました。が、でもその中にすごく気さくさが感じられるお人柄だったと思います。
リー・シン監督は、台湾語映画の監督として最初デビューされまして、60年代半ばからようやくマンダリン(台湾華語)の映画を撮り始めました。60年代の初めは、健康写実路線と言われる、農村などの人々の日々の暮らしを写実的に描くような映画を撮られていましたが、その後、台湾で有名な恋愛小説を得意とする作家・瓊瑶(チョン・ヤオ)の作品をたくさん映画化するようになります。その後70年代後半に入ったぐらいに、リー・シン監督は再び写実路線へと舵を切った。それがこの『小さな町の恋』です。
ホウ・シャオシェンとテレサ・テン
リム チョン・ヤオさんの小説は、台湾だけじゃなくて、中国や東南アジアの中華圏でも大人気でした。彼女は一昨年亡くなったんですけれども、その原作で作られたドラマもいっぱいあります。彼女の小説を原作にした映画を僕も何本か観ましたが、ほとんど全部、スタジオで撮影された映画ですよね。でも今回の『小さな町の恋』はほとんど、ロケ撮影。木彫りの町、三義などで撮影していて、それまで彼が撮ってた映画とガラッと変わっている。
そして、この映画で話されているのは、客家語(はっかご)ですね。台湾映画や中国映画をよく観ている人も、なかなかこの映画の中で語られているセリフは聞き取れないんじゃないかと思います。

