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「天文学って役に立つんですか?」と聞かれたら――国立天文台・小久保英一郎教授インタビュー

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天文学って、何か得をすることはある?

――講演の場で、「天文学って勉強したらいいことありますか」と聞いてくる子はいませんか? 「何か得をすることはあるんですか」とか。

小久保 ああ、いますね。子供よりも、お父さんお母さん世代のほうが多いと思います。「将来、何の役に立つんですか?」みたいな感じで(笑)。

――そういう時は、どんな風に答えるんですか。

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小久保 確かに、明日のご飯が食べられるような、そんな役の立ち方はしないんですけど、少なくとも人間の好奇心というか、本能として、「自分たちがどこから来てどこに行こうとしているのか」を知りたい欲求ってあると思うんです。僕たちは、それを代表して調べている。だから「何かの役に立つか、役に立たないかは関係なく『知りたいものを知る』というのが僕らの本能なんじゃないでしょうか」と言います。

 

――子供より、大人からのほうがそういう意見が……。

小久保 子供にはたぶん、何の役に立つかなんていう観点はまだあんまりないんですよ。自分が好きだったら好き、知りたかったら知りたいという、たぶんそういう基準で生きている。役に立つか、お金が儲かるかとか、考え始めるのはどっちかと言うと大人ですよね。

 すぐ役に立つわけじゃないかもしれないけど、天文学は自分の存在を考える時に、大きな宇宙の空間と時間の中で自分の立ち位置を教えてくれますよね。ちょっとこう、心がやわらかになるというか。そういう話をすることもあります。