発掘したり、潜ったり
――先ほどから、棚に飾ってある小さい土偶が気になっています。
小久保 かわいいでしょ。僕は子供の頃から考古学が好きで、今でも好きです。
――発掘もするんですか?
小久保 子供の頃、家の近くに遺跡があって、自分で発掘していたんです。だって、あんなのが土の中に埋まっていたらすごくないですか? 本当にきれいな黒曜石の矢じりとか、土器が埋まっているんですよ。それってつまり、例えば1万年とか数千年前の人たちが作った矢じりを、僕がそのまま見つけて、拾えたということで……。何千年という時空を超えて、僕の手の中にある。すごくわくわくしませんか?
――ほかにはまっていることはありますか。
小久保 ずっとスクーバダイビングが好きで、海に潜って魚をいろいろ見てますね。海の魚に関しては、オタク中のオタクです。「チョウチョウウオ」という120種類くらいいる魚を探して、世界中の海に潜っています。
――例えばどこの海に?
小久保 行けるところはすべて、世界中行きますね。奄美、沖縄にはじまりパラオ、アンダマン、そしてタヒチからイースター島まで。それぞれの場所に固有種がいるので、そこに行かないと会えないんです。
――すべてのはじまりは「好奇心」から。
小久保 僕、小さい頃は探検隊に入りたかったんです。僕の世代って、テレビで川口浩探検隊とかを見て育っているんです。まだ小さかったので、最初は本物だと思って信じて見ていて、後から全部ヤラセだということを知りましたけど(笑)。でも、それなりに夢があって、子供なりに「こういう仕事をする人になりたい」と。それで山に虫捕り、川に魚捕り、家の近所で土器・石器探しが遊びになりました。
――超アウトドアですね。
小久保 今でも気持ちは同じなんです。宇宙を相手にすると、実際自分が出張っていってやるというのはなかなか難しいので計算機に頼りますが、「研究とは探検」とも言えるし。
――これから作ってみたいもの、書きたいことはありますか?
小久保 今、書いている本は中学生ぐらい向けの本ですかね。「僕はなぜ今こういう仕事をしているのか」という感じの本です。締め切りが過ぎているので早くしないと。あとやってみたいのは、土星の環の本。土星の環はとても美しいので、絵本みたいにビジュアル中心の本を作りたいなと思っています。
僕は、小さい頃を思い出すと、偉そうなおじさんに「これが素晴らしいんだからこうしなさい」とか「お前、こうすべきだ」とか言われても反発するだけだったので、あまりそういうことはしないほうがいいかなと思っていて。「こういう生き方もあるんだよ」っていうことを伝えていけたらいいですね。
写真=末永裕樹/文藝春秋
こくぼ・えいいちろう/1968年、宮城県生まれ。国立天文台理論研究部教授。専門は惑星系形成論。理論とシミュレーションを駆使して惑星系形成の過程を明らかにし、多様な惑星系の起源を描き出すことを目指す。趣味はスクーバダイビング。共著に『宇宙と生命の起源』(岩波書店)、『宇宙の地図』(朝日新聞出版)などがある。