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2人は連れ去られた邦子さんと誘拐犯の男に違いない。確信を持った老婆は、列車が次の三留野駅(現・南木曽駅)に着くや、駅前駐在所に届け出た。
警察は多くの捜査員を動員し一帯を捜索。22日、岐阜県恵那郡付知町(現・中津川 市)の旅館に宿泊を頼んだが断られた、少女連れの男がいたことを突き止める。そして、各家を一軒一軒当たり、2人が同町の雑貨商宅に泊まり込んでいることを特定。
「本当のお兄さんのような気がしてきたわ」
翌23日午前11時、付知署員が樋口を逮捕するとともに、邦子さんを無事に保護した。
事件解決を受けて、新聞には「ただもう怖くて、一刻も早くお家に帰りたくて…」という邦子さんの談話が載ったが、彼女が新聞記者と対面したときに語った言葉は意外なものだった。
「千葉で映画を見たの。面白かったわ。生まれて初めてなの、映画を見たのは。あの人が、あなたは狙われているから守ってあげるという言葉を信じていたの」
「あの人が本多良男で私が妹のひろ子。何だかおかしかったけれど、しまいには本当のお兄さんのような気がしてきたわ。千葉では化粧品セット、名古屋ではスカートを買ってくれたの。退屈するとお人形を作ってくれたり、とても優しくしてくれたので、寂しいと思いませんでした。あの人がそんな悪い人とは…」
被害者がこのように語る樋口芳男とはいったい何者なのか。