「刑事さん、撃たないで!」

 日雇い仕事で金を稼ぎながら青森、函館、苫小牧、金沢の安宿を転々として京都へ。いよいよ金が底をついたころ、樋口は実家に無心するよう手紙を書かせようとする。と、次女が言う。

「手紙を書くのはいいけど、あたしのところよりも、住友の邦子ちゃんの家の方が、ずっとお金持ちよ。あそこからなんとかお金をもらえないかしら」

 この言葉で樋口は決意を固め、自ら清水家に身代金要求の手紙を送る。受け取り場所に指定した東本願寺に警察が張り込んでいるのはひと目でわかった。そこで、樋口は約束の時間に次女に取りに行かせる。

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 警察の計画では、母親の合図で刑事が走り寄って樋口に手錠をかける手筈だったが、次女は受け取った金を素早く樋口に渡した後、再び母親のもとへ。母親は合図も忘れ、娘と抱き合った。これを見て、樋口は脱兎のごとく逃走。

 それに気づいた警察が後を追ったが、このとき次女は「刑事さん、撃たないで!」と叫んだそうだ。果たして、樋口は逃げ切ることに成功した。