「時間が戻せるんであれば……」
翌八月一七日の朝七時ごろ、私はインタビュー場所の下見のために新都心公園の土を踏んだ。
ガジュマルなど数千本の植物が一帯を覆っていた。カメラマンも同行し、大型の撮影機材がある。雨が降ったら取材を続けることは難しい。天気予報は曇り時々雨。午前中から小雨が降り、昼になると激しくなった。外での取材を断念しかけたが、雨が止み、ハイビスカスについた雫に太陽の光が反射し始めた。
約束の午後二時、松永と上原がポロシャツ姿でゆっくり歩いてきた。公園は上原の家から徒歩一〇分弱だ。松永は「晴れてよかったですねぇ」と少し笑った。
初めて見た松永の笑顔だった。署名活動を翌日に控え、「このまま天気が続いてくれるといいですけど」と雑談を続けた。
しかし、二人は大型の探検型遊具を凝視して微動だにしなくなった。遊具は、複数の滑り台、抜け穴、ロープで編んだネットなどが組み合わさっていた。私が「この公園は……」と話し始めた途端、上原が遮った。嗚咽と笑顔が混ざっていた。この公園は、松永家が帰省すると莉子ちゃんと必ず来る場所だった。上原が回想した。
「私の膝に乗って滑り台に乗ったり、どっちが速く滑れるか競争したり。本当に私に懐いてくれてね。最初は上れなかったロープが上がれるようになってね。この遊具を見ると、成長を思い出しますよ」
松永が言葉を継ぐ。
「二歳のころからブランコが好きでした。ずーっと一人でブランコこいで。次の子が並んだら、『どうぞ』って。おもちゃとかも譲るんですよ。本当に優しい子でした」
莉子ちゃんの話は尽きない。上原の声がうわずる。
「莉子を守ってあげられなくて。時間が戻せるんであれば……。最近、夜になると公園を歩くんですけど、つらくて歩ききれないですよ」