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2018/10/01

アリババグループが「個人の信用度」も数値化

 実のところ、これは他の分野でも同様だ。例えばIT大手・アリババ傘下のアントフィナンシャル社傘下の信用サービス機構である芝麻信用(セサミ・クレジット)は、アリババの決済システム(アリペイ)の利用情報やネット上の友人関係、政府のオープンデータベース(学歴、公共料金の支払い記録など)をベースにして個人や企業の信用度を数値化する仕組みだ。

 中国は人口が多く貧富の格差も大きいうえ、ビジネス上ではハッタリをかましてなんぼという商習慣の社会でもあるため、ある人物が信頼に値するかどうかを見極めるコストは大きい(なにより、クレジットカードが過去にあまり普及してこなかった)。

 そうした問題をある程度は解決するものとして、芝麻信用は商取引上では便利なシステムになっている。ただし、これはプライバシー意識の高い先進国では決して普及し得なかったサービスだ。実際にアントフィナンシャル側も似たようなコメントを出している。

徹底した監視社会化はいいことなのか

 同様のデータベース化は、中国政府も別な目的のためにおこなっている。ホテルや交通機関を利用する際に必ず提示するICカード製の身分証の読み取り記録、それに紐付けされたスマホの位置情報や利用情報、顔認証システムも組み込んだ大量の監視カメラの映像情報を組み合わせれば、都市部では当局が特定個人の行動をほぼ完全に丸裸にできるようになった。

 その結果か、『人民日報』によると2017年の中国の人口10万人あたりの殺人件数は0.81件にまで減少した。中国は世界でも殺人発生件数が最も低い国になり、社会の治安に対する国民の満足度は95.55%に達しているという。

顔認証システムを組み込んだ監視カメラが至るところに…… ©iStock.com

 こうした数字は党中央機関紙が伝えたもの(要するにプロパガンダ)とはいえ、実際に中国人に意見を聞いても、自分のプライバシーを国家に把握される監視社会化への心配よりも、社会が「安全」になることを喜ぶ人のほうが多いようだ。

 結果的に、中国は政府の支配強化や社会の安定化と、国民の満足度の向上とを両立させているわけだが、この「成功」も、西側諸国と比較して個人の権利意識が低い社会だから可能になっていると言える。