山口店主は本物の立ち食いそばオタクだった
山口店主に店を始めた経緯などを聞いてみたのだが、山口店主は本物の立ち食いそばオタクだった。
初めて立ち食いそばを食べたのは中学生の時。足立区東保木間にある「和泉」だった。優しいつゆ・自家製の天ぷらを出す個人経営の店である。なんと先生に奢ってもらったのでよく覚えているという。先生のお導きがあったから、33年後立ち食いそば屋を始められたのか。山口店主はその後も立ち食いそばを食べ続けていった。
店を始める前は運送の仕事をしていて、同じく立ち食いそば好きの鶴田さんと一緒に立ち食いそばを頻繁に食べていたという。
蕨駅近くの牛丼のうまい「吾妻屋」、神田駅界隈・新宿・銀座などにある老舗チェーン店「そば処かめや」、初台の天ぷらがすごい「加賀」、日暮里のゲソ天が有名な「一由そば」や駒込の「一〇そば」、梅島のつゆがうまい「雪国」、綾瀬駅すぐの天ぷらメニューのレパートリーがすごい「稜」、草加市にあるゲソ天がうまい「戸隠」、オールドチェーン店の「六文そば」など、人気店はほぼリピートしている。
地方の郊外店やチェーン店もほぼ食べているという。中でも、日本橋三越前にある「そばよし」に行った時は衝撃を受けたという。「余りのうまさに目を見張った」と山口店主はいう。
ある時、山口さんが「飲食店を経営したい」と、外食経験のある幼馴染みの鶴田さんに相談した時、「立ち食いそばオタクなら自分たちでやれるんじゃないか!!」と意気投合したというわけである。それから 2 人の立ち食いそば屋めぐりはエスカレート。つゆや使用するそばうどん、メニューなどの検討を進めていった。
日本橋三越前「そばよし」を彷彿とさせるつゆの味だ
その話を聞いてもう一度そばつゆを飲んでみた。
なるほど、こちらのつゆの味は日本橋三越前の「そばよし」に近いということが分かってきた。「そばよし」は鰹節問屋「中弥商店」が経営し、厳選した削り節を使用している人気店だ。
そのことを指摘すると、山口店主が保温機に入ったつゆを見せてくれた。
「このつゆがウチの自慢なのですが、そばよしさんのように思いっきり鰹節を使うことはできない。そこでそばよしをイメージしながらさらに発展させて、どんこや昆布を入れたつゆを考案しました。この湯煎器のつゆの中にも出汁をとったどんこが入っています。追いどんこです」
つゆの湯煎器をのぞき込むと、オタマに入ったつゆにどんこが確かにいるではないか。「追いどんこ」とは言い得て妙である。

