童貞を落として行くか?

「出撃はもとより望むところ。三橋が、『あと23日の命か。どうする? 童貞を落として行くか?』と笑いながら話しかけてきたのを憶えています。

 ところが、私たちが乗るはずの桜花を輸送途中の空母信濃と雲龍が、相次いで米潜水艦に撃沈され、もう一隻の空母龍鳳は、目的地を変更して台湾の基隆に58機を輸送したものの、フィリピンでは使えず、作戦は中止になってしまいました。先発した整備員たちはフィリピンに残され、陸上戦闘で全員が戦死しました。あれは気の毒だった……」

 信濃沈没時、生存者の救助にあたった駆逐艦濱風水雷長・武田光雄大尉が私に語ったところによると、信濃に搭載されていた50機の桜花は、弾頭をつけていなかったため、沈没時に機体が海面に浮き、それにつかまって救助された者が多かったという。「人間爆弾」がはからずも救命具になったのだ。

次の記事に続く 「渡されたのは巨額の潜伏資金」「自決扱いで“存在抹消”」目的や指示は一切なし…元・桜花パイロットにくだされた「謎の指令」とは