林 そうですね。それがきっかけで「不動産の営業職に転職して、もっと稼ごう」と決めたんです。独り立ちできるように準備をしておこうと。

 でも、彼に言ったら「営業職なんて、ふざけんな」と反対されました。でも「あなたも頑張ってるから、私も頑張ろうと思って」と、うまいこと言って説得して。ただ「家の近所の会社じゃないとダメ」とのことだったんで、近所の会社に転職したんです。

©志水隆/文藝春秋

──不動産の営業職は、どんな仕事だったんですか?

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林 私は仕入れの営業職をしてたんですけど、競売にかかった家をリフォームして売ってもらえるような状態にするまでを担当していました。

 ただ、運転が必須だったんです。それで運転免許を取りたいと彼に話したときも反対されました。「『無理だってうちの人が言ってます』って会社の人に言えないの?」って言われて。それ聞いて、会社の人もドン引きでした(笑)。結局免許は取ったんですが、私がちょっとでも独り立ちするような意志を見せるとダメなんですよ。

──それ、お母さんと同じ支配のやり口かもしれないですね。

林 そうですね。彼からも「お前は1人では生きていけないよ」「一人暮らしなんて、絶対お前にはできない」と言われて。そういわれるうちに私も「そうかもな」と思っちゃうんですよね。

共同口座に残されていたのは…

──でも虎視眈々と別れの準備をしていたんですよね。

林 そうですね。ずっと私、お給料の半分を「共同口座」と呼んでいた彼名義の口座に入れてたんです。でも、私が引っ越し資金に使っても文句ないだろうと思って、家を出ようと思った時に、その口座を確認したんです。

 そしたら、残高がほとんど残っていなくて……。そこで一度望みが消えたんですよね。絶望でした。