10人の新人課長

 4月から新人研修のため、2カ月間の研修所生活がスタートした。

 バブルの残り香を感じさせる豪華な研修所の2人部屋、まだ肌寒い春先の空気の中、朝は決まって同期たちの騒がしい声で目が覚める。

 研修は9時から17時まで、証券外務員資格取得のための講義が中心だった。

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 証券取引法、約款、株式、債券、投資信託……聞き慣れない単語が並んでいたが、研修そのものは想像していたほど厳しくはなかった。後半になると模擬試験が始まり、一定点数に届かない者は居残りや追試を命じられたものの、それさえ乗り切れば夕方以降は完全な自由時間だった。

 同期たちは、夕方以降のすごし方によって、自然といくつかのグループに分かれていった。サッカーやテニスに繰り出す体育会系グループ、インドアの麻雀グループ、さらに飲み歩きグループ。私は誘われれば、たまにサッカーに参加したが、それ以外は極力、各グループから距離を置いていた。もともと集団の熱気がどうにも苦手だったのだ。

 研修が始まって1カ月ほど経ったころだった。講堂へ集められた私たちの前に、10人の若手社員が現れた。彼らは新人課長で、配属後、私たち新入社員を直接指導する現場責任者だと紹介された。

 年齢は20代後半から30代前半くらい。若い者では入社7年目、上は10年目前後と聞いた。壇上へ並んだ彼らはみな、自信に満ちた顔をしていた。

 その日の夜には研修所の中に噂が広がっていた。

「今日の新人課長たちは今後、10の支店に配属されるらしいぞ」

 日興証券では、バブル期、全国すべての支店に新人を2~10人配属していた。