まるで人気サークルの先輩を囲む大学生

 しかし、配属先で先輩社員の雑用係のような扱いを受けるケースが多く、早期離職が大きな問題となっていた。そこで会社は育成方法を抜本的に見直し、「集中配属」を導入する。新人の配属先を、札幌、池袋、新宿、銀座、横浜駅前、名古屋、京都、大阪、難波、福岡の10支店に集約し、それぞれに6人前後の新人をまとめて配属する「新人課」を新設したのである。

 この日以降、新人課長たちは仕事帰りに研修所へ顔を出すようになった。そのたび、同期たちは競うように彼らの周囲へ集まった。

「銀座はやっぱり富裕層多いんですか?」

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「新宿って数字(ノルマ)きついんですか?」

「難波支店ってノリ怖そうですよね」

 まるで人気サークルの先輩を囲む大学生のようだった。

 新人課長によって、人だかりの大きさが微妙に違うのも露骨だった。本部長表彰の回数、社長賞歴、出身大学……同期たちは、どこから仕入れてきたのかわからない「新人課長の情報」を交換し合っていた。

 私はそこに参加する気になれず、人の背中越しに場の空気を眺めていた。それでいて、聞こえてくる情報だけは聞き逃さないようにしていた。元来、臆病な性格なのだ。

 地方支店についても、同期たちは勝手なイメージを語り合っていた。

「札幌は左遷先らしい」

「銀座はエリート、横浜駅前までがギリ勝ち組」

「名古屋は地場企業が強いから営業が相当きついと聞いた」

「福岡に行くなら酒飲めないと終わり」