「驚くべきことに彼は対人の研究会をこれ以外、やってないらしい」
記者会見後は、近くのお店に場所を移して恒例の打ち上げ。ここからは木村九段も加わった。ちょうど筆者の目の前に座っていたので話を聞くと、「うれしいけど、やっぱり複雑な部分もありますよ」と、退会が決まった弟子のことを慮っていた。
後日、改めて新四段を詳しく知る先輩棋士に話を聞いた。まずは渡邊新四段の兄弟子である勝又清和七段から。
「師匠が柏の道場を始めたのは僕が四段に上がったころくらいなんだけど、柏の直系という意味では晴磨君が棋士としては3人目なんだよね。まずは三枚堂君が来て、彼が勇気君(佐々木勇気八段)を連れてきて、それから晴磨君。他の石田門下は僕が師匠に紹介したという経緯があるから、師匠が手塩にかけて育てた子が棋士になるのは久しぶりなんだ。
柏の皆さんは号泣するほどに喜んでいますよ。真面目な子ですが、三段リーグ1期抜けはさすがに驚きました。今のリーグは人数が多い(第79回は40人)から、奇跡ですよ。30歳までは将棋一本で、バリバリ勝ってほしい。柏の研究会でこの間、指したんだけど、驚くべきことに彼は対人の研究会をこれ以外、やってないらしいんだよね。研究会で指した将棋を後で調べてみると、作戦勝ちと思った将棋が向こうはほとんどAIの最善手で、中終盤が強いな、と」
「三段リーグ1期抜けは信じられない」
いつの時代も三段は序盤定跡の最先端を行く存在と見られるから、棋士の研究会には引く手あまたとなりやすい。事実、國井新四段は永瀬拓矢九段や広瀬章人九段と研究会をともにしているそうだ。そういった意味では(三段リーグ初参加により実力が未知数だとしても)、対人研究会がほとんどないという渡邊新四段のケースは少数派ではないだろうか。
なお、柏研に参加している1人が星野良生五段だ。渡邊新四段の将棋の印象を聞くと、う~ん、そうですね、なんだろう、と少考したのちに「1つ挙げるなら、辛抱強さでしょうか。ねじり合いに強いという感じです。彼が二段の頃から指していてそういう印象を持っていましたが、それでも三段リーグ1期抜けは信じられないですね」と答えた。
そして、渡邊新四段の師匠である石田九段は、
「渡邊晴磨くんの昇段の報を聞いて、まさか1期抜けを果たすとは、と驚いたとともに大変嬉しい気持ちで一杯です。晴磨くんは小学校1年生から柏の石田九段子供将棋教室に通い、どんどん強くなりました。これからは対局と、将棋普及での活躍を期待しています」
とコメントしている。
愛弟子の四段昇段は、療養中の師匠にとって、何よりの吉報となっただろう。



