生成AIの開発競争において、イーロン・マスク氏率いるxAIの「グロック」は、ChatGPTなどの後塵を拝しており、世間からは「追いかける側」「負け組」と見られがちだ。しかし、彼がAIを使って見据えているのは、そもそもスマートフォンの画面の中での勝負ではなかった――。
マスク氏はAIを使って、一体何を目論んでいるのか。池松由香氏の著書『データで徹底解剖 イーロン・マスク帝国』(日経BP)より一部抜粋してお届けする。
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グロックはAI業界の負け組か
AI業界の評価軸は明快だ。ユーザー数、マーケットシェア、ベンチマークスコア……。これらの一般的な評価軸で測る限り、グロックの現在の立ち位置は「追いかける側」と言わざるを得ない。一般的には「負け組」と認識している人も多いのではないだろうか。
米アプトピア(Apptopia)によると、2026年1月時点の米国チャットボット市場シェアはオープンAIの「Chat(チャット)GPT」が45.3%、グーグルが提供する「Gemini(ジェミニ)」が25.2%を占め、グロックは15.2%で3位につける。イスラエルのシミラーウェブ(Similarweb)によると、ウェブアクセス全体で見ればシェアは2~3%台にとどまり、サイバーセキュリティー事業を手掛ける米クラウドフレア(Cloudflare)の同年6月1日時点の日次トラフィックランキングでは8位だった。資金調達額こそ26年1月のシリーズEで200億ドルを調達し、2月時点で評価額2500億ドルに達したが、アンソロピックの9650億ドル、オープンAIの8520億ドルには遠く及ばない。
数字だけ見れば、グロックは「有力な3番手」という評価に落ち着く。だが、この評価軸そのものに、根本的な間違いが潜んでいる。我々が問うべきことは、「グロックはそもそも、チャットボット市場での首位を目指して設計されているのか」という点にある。試合の勝ち負けを語る前に、マスク氏がどの試合に出場しているのかを確認する必要があるのだ。データで見てみることにした。

