物理世界を動かす「脳」として
設計されたAIグロックと他社AIの思想的差異を可視化したのが、図表3-2に示したワードクラウドだ。ワードクラウドとは、対象のテキストデータから、どんなワードがどの程度登場したかに応じて、文字の大きさを変える表現手法だ。
分析に用いたのは、各社が公開する「モデルカード」と呼ばれる文書だ。AIモデルカードとは、そのAIが何を目的に開発され、どう使われるべきで、どんなリスクがあるかを開発者自身が記した技術仕様書である。
マーケティング資料とは異なり、エンジニアや研究者が実際の設計思想を率直に記述する文書であるため、各社の「本音」が出やすい。アンソロピック、オープンAI、xAI、グーグル・ディープマインドの4者について、23年から26年6月にかけて公開されたモデルカード、および新モデルのリリース時に公開された詳細版のシステムカードの計11本を収集し、思想を表す語彙に絞って頻出語を抽出した。
アンソロピックの「行動(behavior)」「ユーザー(user)」「リスク(risk)」、オープンAIの「思考(thinking)」「コンテンツ(content)」「安全性(safety)」―各社が人間とのテキスト対話の質と安全性に集中していることが、頻出語の分布から読み取れる。グーグル・ディープマインドは「推論ショット(shot)」「画像(image)」「マルチモーダル(multimodal)」など、モデルの汎用性能を重視した語彙が目立つ。
ところが、xAIの象限は様相が異なる。「能力(capabilities)」「率(rate)」「測定(measure)」「生物学的(biological)」「迎合(sycophancy)」といった語が並ぶ。特に迎合性(相手に媚びへつらう性質)は、xAI以外には見当たらない語だ。モデルカードに頻出するのは迎合性を認識して排除しようとしているから。チャットボットとして「感じよく振る舞う」ことを拒絶し、何かを「正確に推論し実行する」ことに軸足を置いた思想の表れといえる。「測定(measure)」が頻出するのも同じ文脈だ。会話の自然さではなく、能力が目標を達成しているかどうかを厳密に検証するという姿勢がうかがえる。

