ジョナさんはその後、マスク氏との距離をさらに縮めた。ツイッターで「インタビューをさせてほしい」と駄目元で投稿すると、「いいよ」と返事が来た。22年6月、マスク氏のアシスタントから連絡があり、ギガテキサスに招待された。オンラインでのやり取りだけだった2人が初めて顔を合わせた瞬間だ。

 緊張を隠せずにいたジョナさんにマスク氏は、「食べ物はいる?」と優しく気遣ってくれたという。

「世間は本当の彼を知らない。本当は心の優しい人なの」。ジョナさんはそう言って、また満面の笑みを見せた。

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マスク氏に夢をもらった人たち

 ジョナさんのような人たちに、筆者は何人も出会ってきた。

 23年3月、スペースXの打ち上げ拠点があるボカチカを訪れた時のことだ。スターシップの打ち上げ試験が近いという噂が広まり、発射台近くのビーチや側道には見物客の車両がずらりと並んでいた。キャンプ用の椅子と机を広げて飲食を楽しむ人たち、タオルを広げて寝そべる人たち。打ち上げは結局、実施されなかったのだが、皆、そんなことを気にもせず楽しそうだった。

 側道を歩いている時、タープを張ってデッキチェアでくつろぐ2人組に声をかけた。白髪の初老の男性、カルヴァンさんと、茶色の髪に長いひげの男性、チェットさんだった。

「ハーイ、今日は打ち上げがあると思ってきたけど、ないみたいですね」

「僕もそう聞いてジョージアからこのキャンピングカーで来たんだ。まあ座りなよ」

 チェットさんは55歳(当時)の元軍人で、退役後の余生をキャンピングカーで旅しながら、打ち上げ準備を見に頻繁にこの地を訪れていた。自宅に戻るのは年に1回ほどだ。カルヴァンさんは近くの街に家族と住んでいるが、やはり時間があるとこの場所で打ち上げ準備の様子を眺めるのが楽しみの一つだと教えてくれた。

©AFLO

 しばらく世間話をした後、筆者は彼らに話しかけた目的を思い出し、マスク氏についてどう思うか尋ねた。カルヴァンさんはしばらく考え込んだ。

 彼はマスク氏本人に会ったことがなく、メディアの報道を聞く限り、マスク氏の人柄をよく思っていなかった。でも、人類を火星に送るというミッションを成し遂げそうな人は、この男をおいて他にいない、とも考えていた。カルヴァンさんの世代は、幼い頃に「アポロ11号」の月面着陸を見ていて、宇宙への憧れが強い。マスク氏と同じ時代に生きているからこそ、またあの感動を体験できると思うと胸が高鳴るのだという。

「彼のような人がいてくれたから、我々は宇宙への夢を持てる。感謝しているよ」