熱狂が熱狂を呼ぶスパイラル

 マスク氏が繰り広げる事業の夢に共感し、マスク氏のファンになる人は多い。この現象を「カルト宗教のようだ」と批判する人たちは、マスク氏の一挙手一投足に熱視線を送る人たちのことを「イーロンのファンボーイ」と呼んでいる。

 ファンボーイのカリスマ的存在として知られるガリレオ・ラッセルさんは、ニューヨーク大学卒の30代。テスラの企業分析に定評があるユーチューバーで、チャンネル登録者数は15万人を超える。

 発端は18年5月にテスラが開いたカンファレンスコール。既存概念にとらわれた機関投資家の質問にいら立ちを隠せなくなっていたマスク氏の目を、パッと開かせたのが彼だった。

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「手持ち現金のすべてをテスラ株に投入してきた」と話すラッセルさんだが、個人投資家が企業のカンファレンスコールに参加することはほぼあり得ない。ところがユーチューブ視聴者の後押しとテスラの投資家向け広報(IR)担当者の理解もあり、この日は特別に参加が許されていた。登場は開始から約40分後。

「(米アルファベット傘下の)ウェイモが特定市場を対象に自動運転を使ったタクシーサービスを始めます。テスラ・ネットワークの進捗を教えてください」

 テスラ・ネットワークとは、所有者が使っていない間に誰でも呼び出せる自動運転車両の共有網構想で、マスク氏肝煎りのプロジェクトだった。「君が面白い質問を続ける限り誰も君を止めないよ。続けてくれ」。当時の記録から、マスク氏の興奮が伝わってくる。この後、ラッセルさんは20分以上にわたって質問を繰り出し、マスク氏は上機嫌で対応した。翌月、2人は同社の株主総会で初対面を果たし、その後もマスク氏が自宅に招くなど交流を続けている。

 こうした直接の触れ合いが、熱意あるユーチューバーを生む。彼らが等身大の言葉で発信するから同世代の視聴者が共鳴し、テスラへの関心を深める。その視聴者がまたXでマスク氏をフォローし、次のファンを生む―熱狂が熱狂を生むスパイラルが、こうして回り続ける。テスラが広告費をほぼゼロにできる理由が、ここにある。