交番も郵便局もグルだった

女子大生は何度も逃げようと試みるが、村中の人々がグルになっていて、村の出口には監視がいるので、早朝でも深夜でも逃げ出すことができない。交番の人もグルで村役場の人に訴えても取り合ってくれない。女子大生は郵便配達員に、実家に送る手紙を託そうとするが、郵便配達員もグルなので、その手紙は握りつぶされ、手紙を出すこともできない。次第に、女性は村で見かける若い女性は全員、誘拐されてこの村に連行された女性であることを知る――というストーリーだ。

なぜ、このような誘拐や人身売買が横行するのか。背景にあるのは中国の一人っ子政策の影響や都市と農村の格差の問題だ。

中国では1979年末から人口抑制のための一人っ子政策が開始された。農村も例外ではなかったが、農村では働き手が必要で、かつ家を継ぐ男児が女児よりも求められた。もし女児が産まれたら、こっそり殺められることもあった。

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その結果、農村には男性しかいない、といういびつな形になった。中国国家統計局の2025年の調査によると、人口14億545万人のうち、男性は7億1722万人(51.03%)、女性は6億8823万人(48.97%)で、男女比は女性100に対し、男性は104.21だった。農村では、男性余りの傾向はより顕著であると想像できる。

「嫁を買う」が横行する背景

中国は都市と農村との格差が大きく、2020年の時点で都市の平均年収は農村の3倍近い。この格差は昔からあり、とりわけ一人っ子政策の開始から20年ほど経過した2000年頃には、生活の苦しさも相まって「農村の嫁不足問題」は極めて深刻な状態になった。

2000年頃といえば、中国が年率10%以上という猛スピードで経済的に飛躍する時期だが、同時に、その陰では誘拐事件も急増していた。嫁不足で追い詰められた農家の人々は、彼らにとって大金となる額を人身売買の仲介業者に支払って「嫁を買う」という信じられない手段に出たからだ。冒頭で紹介した女性が行方不明になった年も、まさに2000年である。