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免震データ改ざん KYBはなぜマンションの物件名を公表しないのか

データ改ざんが頻発する2つの理由

2018/11/06

genre : ニュース, 社会

 大手油圧機器メーカーKYBおよびその子会社カヤバシステムマシナリーが発表した免震制振オイルダンパーの検査データ改ざん問題が波紋を広げている。

 オイルダンパーという装置には2種類ある。地震の揺れを吸収、制御する装置で築年の古い建物などの壁に筋交いのようにはめ込まれている制振ダンパー、高層建物などの地下の建物全体を支える部分に免震ゴムなどとともに装備されている免震ダンパーである。

基準値から乖離した悪質な改ざん

 ダンパーの内部にはオイルが装填されており、建物全体の揺れを緩和する役目を果たしている。阪神淡路大震災や東日本大震災など度重なる大地震を契機に、既存建物の耐震性の確保と新築の、とりわけ高層建物の免震性能を高めようとの目的で、多くの建物に設置されるようになったのだ。

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通天閣に設置されているKYBのオイルダンパー(中央にある円筒形状のもの) ©時事通信社

 ダンパーは個々の建物の構造や性能、土地の状況などによって適合したものを設置する。今回の事件は国が認定する基準値に適合しないダンパーを大量に出荷していたことが内部告発により発覚したものだ。具体的には基準値よりプラスマイナス15%以内であれば適合するはずのものが基準値から乖離したものを、検査データを書き換えて出荷していたというかなり悪質なものだ。

地震国ニッポンを脅かすデータ偽装が頻発している

 KYBの発表によれば2003年1月から2018年の9月まで計987件もの不正が見つかり、うち904件が免震ダンパー、83件が制振ダンパーだという。

 こうしたデータ改ざんは最近の日本企業では頻繁に報じられるようになった。建物の耐震性関連の問題だけでも2005年におこった建築士による建物構造計算書書き換え問題(いわゆる姉歯問題)、2015年に横浜の大規模マンションで発覚した杭打ちデータ偽装問題、そして2015年に発覚した東洋ゴム工業の免震ゴムデータ不正の問題など立て続けに生じている。地震国ニッポンでは建物の耐震性は命にかかわる大問題であるのにもかかわらず、こうした不正が蔓延ることには正直驚きを隠せない。