〈村上虹郎とリリー・フランキーは、なるべく野放しにしてほしい――〉映画『銃』の製作にあたり、奥山和由プロデューサーは、武正晴監督にそう持ちかけたという。
原作は中村文則の同名小説。物語は、村上虹郎演じる主人公の大学生トオルが、ある雨の夜に河原で拾った銃を部屋に持ち帰ったことから始まる。
「どうりで監督が細かい演出をしないなと思ったんです(笑)。映画って、監督が考えるとおりに作って成功する作品と、技術を持った人たちが、現場で生まれる予想外のものを撮りながら成功させる作品とがありますよね。奥山さんや武監督が今回求めたのは後者。僕やリリーさんに役を委ねることで、この作品を単なる小説の実写映画ではないものにされたんだと思います」
日ごと銃に魅入られてゆくトオル。その彼の前に突如現れるのが、刑事であるリリー・フランキーだ。
「リリーさんは、セリフを声に出さずに黙読で摂り込んで、現場で一気に“吐き出して”きました。その姿はどこか不気味で気持ち悪くて、怖さをも帯びた刑事になっていた」
実は、オファーを受ける3年ほど前、ある俳優から「これは虹郎にやってほしい」と勧められた本が『銃』だった。
「なぜ僕をイメージしたのかはまだ聞いてないから分かりません。でも、トオルは銃を拾って狂ったんじゃなくて、銃によって異常性が暴かれた。だとしたら、僕の中にある“愚かさ”を見抜いたのかもしれません(笑)」
INFORMATION
映画『銃』
11月17日(土)よりテアトル新宿ほか、全国公開
http://thegunmovie.official-movie.com/