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年度勝率0.855を達成した中原

 羽生も天王戦(のちに棋王戦と統合)と若獅子戦(現在休止中)という2棋戦で優勝してからの100勝達成だった。特に天王戦は全棋士参加棋戦だったので、その優勝の価値は高い。

 藤井以前の最高勝率だった中原はというと、こちらも中身はすごい。棋戦優勝は古豪新鋭戦(のちに名棋戦を経て棋王戦へ)のみだが、100勝達成時に2度もタイトル戦の番勝負に出場しているのが圧巻だ。初出場時は山田道美棋聖(当時)に敗れたが、2度目の挑戦で借りを返し、自身初のタイトルである棋聖を獲得。番勝負を制したのが通算102個目の勝利だった。

 また、この間の1967年度に達成した年度勝率0.855(47勝8敗)は、七冠達成時の羽生でも、29連勝を果たした2017年度の藤井でも破ることができなかった、現在に至るまでの史上最高勝率として燦然と輝いている。

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この勢いで2年続けて年間勝率8割達成となれば

 では藤井の100勝はどうか。やはりというか、非の打ち所がない。朝日杯将棋オープン戦と新人王戦という2棋戦で優勝を果たし、名人挑戦へと連なる順位戦でも16連勝中で2期連続昇級を狙う位置につけている。デビュー29連勝のフィーバーに至っては今更説明する余地もないはずだ。

新人王表彰式での師匠・杉本昌隆七段と藤井七段 ©文藝春秋

 この勢いで2年続けて年間勝率8割達成となれば、中原と羽生しか達成していない、偉大な記録と肩を並べることになる(大山は1940~42年の3年間連続で8割を達成しているが、現在とは条件が異なり過ぎるので同列には扱いにくい)。

 現在、通算勝率7割超え及び通算100勝を達成しているのは藤井と羽生を除くと永瀬拓矢七段、千田翔太六段、近藤誠也五段の3名。彼らの通算100勝時の成績は以下の通りだ。

永瀬拓矢 100勝43敗、0.699

千田翔太 100勝42敗、0.704

近藤誠也 100勝40敗、0.714

タイトル戦の経験もある永瀬拓矢七段 ©文藝春秋

 いずれも偉大な先輩に勝るとも劣らぬ数字だ。今後は藤井と大舞台で競い、これからの棋界を背負っていくであろう優秀なホープである。中でも永瀬の数字が目を引く。わずか1厘とはいえ7割を切っている。

 現在の永瀬の勝率が0.715(293勝117敗)。ある程度の対局数を重ねてから勝率を上げるというのは並大抵のことではない。藤井フィーバーのきっかけとなった炎の七番勝負でも1人、気を吐いて藤井に黒星を付けただけのことはあるというべきか。

 そしてもちろん、羽生竜王や佐藤天彦名人をはじめとする現在のトップ棋士も黙ってはいないだろう。藤井が一流への道をどのように駆け上がっていくか、楽しみである。

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