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読者からの質問

 

●最初の売上、評論家の批評、ネットなどをはじめとする読者の評判。賞のノミネートなど小説を発表した後に、色々な反応があると思いますが、どれがいちばん気になりますか。(30代男性)

本谷 芥川賞の選考委員の方たちの選評が一番気になります。今回候補になった時に、あっ嬉しいと思ったのは、3度目の候補からずいぶん時間が経っているから、今の自分の小説を選考委員の方たちに読んでもらえるということでした。

 選考委員の方たちの、他の小説に対する選評を読んでもなるほどなと思うことが多いんです。自分に響く言葉がたくさんある。今の自分が酷評されるのか、それとも受け入れてもらえるのかが気になっていたんです。

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●劇と小説、どちらも表現するという面で共通していますが、手法が異なるものです。文庫版『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』の解説が思い出されます。本谷さんはこの2つに対し、それぞれどのような思いで取り組んでいるのか気になります。(20代男性)

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (講談社文庫)

本谷 有希子(著)

講談社
2007年5月15日 発売

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本谷 小説は、コートの向こうにいる相手にそのまま球を打つテニスをしている感覚です。戯曲は、壁打ちをして、壁から跳ね返ってきたボールを相手に打たせるような、間接的な感覚です。

 戯曲は書いただけでは完結できなくて。役者さんがいて、照明が入って、音響が入って、空間があった時にどうなるかをイメージしながら書かなきゃいけない。その全体像、総合的なことを全部同時に考えながら進めています。台本は表現の一部だという感覚で書いています。

 

●小説を書くにあたって、モチベーションとなるものは何ですか。(40代男性)

本谷 書くことは大変な作業だったりしますが、ある一瞬だけ、小説が自分の手に負えなくなる時があって。その時に出る快楽物質があるんです(笑)。他のどんなことをしている時よりも、一番気持ちよくて楽しいんですよね。たぶんそれがモチベーションですね。

●小説を書こうともがいていますが、荒唐無稽な設定に急に恥ずかしくなったりして、どうしても他人の評価を気にしてしまいます。本谷さんならそんな時にどういうふうに執筆に集中しますか?(20代男性)

本谷 怖がらずに勇気を持って前に突き進む。書き上げる。後ろを見ない。それしかないですよね。他人が「えー」って思う小説でいい、くらいの気合いで書けばいいんじゃないでしょうか。

●作品が生まれてくる時の心情はどんな感じでしょうか。(40代男性)

本谷 「生まれてくる」というのは、書き進めている時と考えていいのかな。この作品の行こうとする方向を、決して邪魔しないようにしようと思いながら、細心の注意を払って書いています。特に序盤ですね。