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特集観る将棋、読む将棋

2018/12/30

大山先生の1433勝を超えたい

――― 棋聖戦で羽生現九段が豊島将之現棋聖に敗れ、一時は八大タイトルに8人が乱立した。31年ぶりの事態でした。

「前回、昭和62(1987)の時は私がだらしなくて、同じ状況になった(七大タイトルに7人が並び立った)。群雄割拠とは言いますが、実力や立場からすると渡辺さん(渡辺明棋王、永世竜王・永世棋王資格保持者)と天彦さん(佐藤天彦名人、今春には羽生の挑戦を退けて名人位を三連覇)がもっと勝たなくてはいけない。彼らが力を発揮すれば、タイトルの分散はないはずなんです。一方で、棋聖・王位を連続奪取した豊島(将之)さんは、いつ壁を破るかどうかで、2つ3つと取っていっても不思議ではない力を持っていたので驚きはないです。これから将棋界の代表として求められるものが変化して、どのようになるのかを期待したいです」

―― これからの夢。

「藤井七段、弟子の都成と対局することは短期的な目標としてありますし、長期的なものでいうと、通算勝ち星で大山先生の1433勝を超えることです。羽生さんは時間の問題で超えていくでしょうけど、その後に通算2位になりたいとは思います。ようやく1300勝を超えられたところですけど、少しずつ近づいて行けたらと思います。毎年20勝くらいできたらいいんですけどね……なかなか大変なんですよ」

 

 取材の翌日、谷川は順位戦B級1組の松尾歩八段との一局を迎えた。

 陽が落ちて、美しい終盤戦が始まった。

 肉を切らせ、骨を断ちに走る谷川の速度は観る者の心を躍らせる。そして、刹那を生きる棋士たちの生き様を盤上に観る。

 谷川の駒は勇猛に、果敢に玉頭へと殺到し、松尾を討ち取っていった。「鬼の棲み家」と表現される強者たちのリーグで5勝5敗と存在感を発揮している。

 王位戦予選決勝では都成との初めての師弟戦が実現した。リーグ入りを懸けた大一番になる。谷川は何を思いながら戦うのだろうか。

 数年前のように緩やかに下り道を歩いていっても、栄光は陰らない。足跡は輝き続ける。

 それでもなお、と谷川は思っている。56歳の現役棋士として、若き実力者たちと肩を並べて先鋭的な研究を課して勝とうとしている。

 まだ燃え尽きてなどいない。盤上には、まだやり残したことがある。谷川の手には、光よりも速い武器がある。

写真=深野未季/文藝春秋

 

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