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日本美術の世界で、伊藤若冲が圧倒的なキラーコンテンツになった理由

辻惟雄(美術史家)――クローズアップ

2019/01/27
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奇想の画家たちの顔見世興行

 大いに「出世した」これら画家たちの作品を一堂に集め、展観しようとの企画がこのたび立ち上がった。2月9日から東京都美術館で始まる「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」である。

伊藤若冲「紫陽花双鶏図」

「いわば奇想の画家たちの顔見世興行とでもいえましょうか。こうしたかたちでの展覧会は初めてのこと。皆さんにどう観ていただけるか、私としてもたいへん楽しみです。ことは美術に限りません。日本の文化がいかに多彩であるか知っていただくきっかけになれば。さらにいえば、歴史とは一方向から眺めるだけでなく、さまざまな見方ができる豊かなものだと実感していただけたら何よりです」

 今展に合わせて辻さんは、奇想の系譜に連なる江戸の絵師を新たにピックアップした。

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「琳派の流れを汲んだ鈴木其一、それに禅僧の白隠慧鶴です。とりわけ臨済宗中興の祖といわれる白隠の描く達磨図はすごいものですよ。これが禅の持つ力なのでしょうか、線がなんとも力強く、他の絵師の線が霞んでしまいそうなほど。歴史から学び、見出せることはまこと尽きないものだと、改めて実感しました」

つじのぶお/1932年、名古屋市生まれ。美術史研究家。東北大学教授、東京大学教授、国際日本文化研究センター教授、千葉市美術館館長、多摩美術大学学長、MIHO MUSEUM館長などを歴任。著書に『奇想の系譜』『奇想の図譜』『辻惟雄集』(全6巻)など多数。

INFORMATION

『奇想の系譜展』
江戸絵画ミラクルワールド」東京都美術館にて2月9日から4月7日まで。伊藤若冲「紫陽花双鶏図」(米国・エツコ&ジョー・プライスコレクション)も出品される
https://kisou2019.jp/

新版 奇想の系譜

辻 惟雄

小学館

2019年2月4日 発売

日本美術の世界で、伊藤若冲が圧倒的なキラーコンテンツになった理由

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