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ジョーダンもスラムダンクも変えられなかった日本バスケ界 強くしたのは誰か?

44年ぶりの五輪出場へ

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(2)東京オリンピックのため、“あえて”国内でプレーする選手

 身長わずか167cmながら、Bリーグの顔役である富樫勇樹という選手がいる。司令塔とも称されるポイントガード(PG)のポジションを務めて、予選では怪我で欠場した2試合をのぞき、10試合で先発した。

 彼は、中学3年生のときに全国中学校バスケットボール大会で優勝。そのあとアメリカにわたり、田臥勇太に続いて、日本人で2番目にNBAのチームに登録された(公式戦出場はなし)キャリアの持ち主だ。

 富樫はBリーグの千葉ジェッツふなばしという強豪チームに所属しているが、もともと強い海外志向の持ち主だ。アメリカだけではなく、ヨーロッパでのプレーを模索していた時期もある。そんな日本バスケ界の逸材が、Bリーグでプレーする理由について、こう語っていた。

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「東京オリンピックの出場を熱望しているし、成長するために出場機会が必要だと思っています」

やはり渡米を遅らせたホープ・馬場雄大

 同様の発言をしている期待のホープは他にもいる。大学卒業を待たず、異例となる大学4年生の途中にプロになった馬場雄大だ。サッカー界では似たようなケースとして、高校2年の途中にプロになった香川真司がいると表すれば、馬場の凄みもわかるだろうか。

 実は、馬場も大学卒業にあわせての渡米を検討していた。もちろん、将来的にアメリカでプレーする夢は少しもあきらめておらず、語学の勉強のために最近では英語で日記をつけているほどだという。そんな彼もまた、渡米を遅らせている理由の一つとして、東京オリンピックの存在をあげている。

 何故そうなるか。その背景には少しややこしい状況がある。

 今回のバスケットボールのW杯予選は、サッカーの予選をまねて、1年間に4回の代表戦ウィークを設けて、ホーム&アウェー方式で行なわれた。通常のシーズン中にリーグ戦を中断する形でも代表戦ウィークが組まれていたのだが、アメリカでプレーする選手たちは、ここには参加できない。

 本来であれば、海外でプレーしていてもおかしくはない人材が日本にとどまっているのは、Bリーグという受け皿が誕生したことに加えて、栄誉ある自国開催のオリンピックが迫っているという特別なタイミングであるからだ。

 Bリーグでプレーしていれば、日本代表の活動には基本的にフルタイムで参加できる。現時点での彼らの選択が、日本の躍進につながっているのは間違いない。