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「『ありのままの君』でいいわけないだろ」――“越境芸人”マキタスポーツが考える「共感ビジネス」

マキタスポーツ×おぐらりゅうじ #4

genre : エンタメ, 芸能

note

合理化の時代に「シャツとネクタイ」はもういらない?

マキタ さっき文藝春秋の社内に菊池寛の銅像があってふと思ったんだけど、創業者の銅像って、昭和の象徴だよね。

おぐら ベンチャー企業だったら「銅像があることでビジネスに何の役に立つんですか?」「銅像を作る経費を社員に還元してください」って言われますよ。

マキタ 合理化を進める時代に不要になったものってたくさんある。

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おぐら ベンチャー企業の社長や役員って、会見の場やメディアに出るときもTシャツにジャケットの人が多くて、シャツとネクタイじゃないんですよね。

 

マキタ ビジネスの役に立たないから。

おぐら シャツを着てネクタイを締めることで売り上げや成果に影響が出るならやりますけど、っていう。

マキタ 世の中がグローバルスタンダードや利便性を追求して、合理的に均質化していく流れは止められないとはいえ、一方では雑というか、精度が低いことの魅力が見直される動きもある。前に高校野球の試合を観に行ったらすごいおもしろかったんだけど、その理由を考えてみるに、プロ野球と比べて精度が低いからこそなんだよね。

 

おぐら 甲子園も「なんでわざわざ夏の炎天下で野球やるんですか?」「普通に危険じゃないですか」って言われてますよ。

マキタ たしかにそうなんだけど、技術にしろトレーニングにしろ、プロ野球のクオリティを知っているうえで、高校野球の雑さを肯定したときに、初めてコンテンツとして楽しめるんだと思う。

おぐら たとえばアイドルでも、Perfumeのような世界に通用するレベルの超ハイクオリティなパフォーマンスが当たり前になってくると、逆に不完全でおぼつかない地下アイドルのほうがおもしろい、みたいな気持ちになるのはわかります。上位概念があるからこそ、新鮮な気持ちで「雑」を楽しめるようになる。

マキタ ただ、そこをこじらせると、有名になったときに「メジャーに魂売った」とか言い出す人になるので要注意。