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どの差別にもある、特定のカテゴリ-を排除するための虚偽

 そもそも、排除派は、あたかもトランス女性が女性トイレや女湯の使用を権利として求めているかのような前提で批判を展開していますが、私が知る限り、公の場でそうした要求はありません(個人で主張している人は絶無ではないでしょうが)。ほぼ今まで通りでいいのです。多目的トイレや温泉の貸切風呂は増やしてほしいですが。

 排除派は「トランスジェンダーを装って女湯や女性トイレに侵入する犯罪者がいる。そういう連中とトランスジェンダーと見分けがつかないから、女性の安全のためにトランスジェンダーを排除すべきだ」という言説を展開しますが、これは屁理屈です。たとえば、「火星人が攻めてくるかもしれないから、火星人に似た容貌の禿頭の人は排除すべし」と主張する人がいたら、「なにを言ってるんだ、悪いのは火星人だろう。禿頭の人はむしろとばっちりの被害者ではないか」と思うのではありませんか。

 現実にありもしない事態を想定して、人の恐怖感を煽り、特定のカテゴリーを排除するのは、差別扇動の典型的な手口です。

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「フェミニストなのに、トランス女性の味方をするのはけしからん」

 第3段階は、3月以降です。Twitterでトランス女性排除の動きが高まる中、3月8日のウィメンズ・マーチが近づいてきました。

 3日夜、実行委員会は「トランスジェンダーに対する差別の煽動や排除する言動は禁止」という声明を出します。「♂」印の付いた赤いハイヒール(トランス女性を意味している)が女性たちを踏みつけにする図案など、トランス女性への憎悪を掻き立てるプラカード案が作られTwitter上で流布されましたが、実際には実行委員会の声明が徹底され、私が観察した範囲では、トランス女性を排除・差別するようなプラカードはなく、逆に、トランスジェンダーとの連帯を主張するプラカードがいくつも見られました。

トランスジェンダーの権利を求めるプラカード ©iStock.com

 それに先立つ2月末には「トランス女性に対する差別と排除とに反対するフェミニストおよびジェンダー/セクシュアリティ研究者の声明」が出され、賛同の署名運動が始まります(私も呼びかけ人です)。結果はまだ発表されていませんが、おそらく数1千人の署名が集まったと思われます(最終的に有効署名2715名)。

 驚くべきは、こうした反トランスジェンダー差別の動きに対して、トランスジェンダー排除派の人たちがTwitter上で激しく反発していることです。

「フェミニストなのに、女性をないがしろにして、トランス女性の味方をするのはけしからん」

 排除派は女性の身体をもって生れて来た人だけを女性と考え、擁護派は女性ジェンダーで暮らしている人を女性と考える、つまり、フェミニズムが包摂する範囲が対立点として浮かび上がってきました。