「あなたは大将なんだから!」

 加藤紘一の肩をつかみながら説得する谷垣禎一。

 このときの写真を見ると、わずかな余白以外はすべておじさんで埋められている。騒然としているおじさん。泣いているおじさん。

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 異様すぎる。いったい何だこの空間は。

2000年11月20日、議員から抗議をうける加藤紘一・元自民党幹事長と駆け寄る谷垣禎一氏

 平成の政治史で何か一つ言葉をと言われたら、“加藤の乱”での「あなたは大将なんだから!」をあげたい。

 ここには「政局」「永田町」「オヤジジャーナル」、そして「現在へ」がすべて詰まっていると考えるからだ。

ゾクゾクする最高のキャスティング

 まず登場人物にときめく。

 平成12年(2000年、つまりミレニアム)の11月に起きた加藤の乱は、自民党宏池会のプリンスと言われてきた加藤紘一が当時の不人気首相の退陣を求めたクーデター未遂のことである。

 その首相とは森喜朗。ほら、もうワクワクしてきたでしょ。

森喜朗氏 ©文藝春秋

 森首相の支持率は驚異のひと桁台。ああ、やっぱりゾクゾクしてきた。最強のキャスティング。

 森喜朗を支えた自民党幹事長は野中広務。人の弱みを探させたら天下一品。敵に回したら最大級に厄介な人物。

 そして主役は加藤紘一、山崎拓、小泉純一郎の通称「YKK」である。永田町のヤングおじさんたちのミレニアム物語でもあった加藤の乱。