昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

 仕方ない。次に内田春菊さんにツイッターのダイレクトメッセージを打った。本当にごめんなさい。実はこんなことがありまして……と。闘病中の友人とは、内田春菊さんのことだった。すでに2018年の1月、内田さんはぶんか社から『がんまんが』を刊行し、病気との闘いを公表しているが、このときはまだ手術前後の落ち着かない時期。体力の回復はおろか、気持ちだってきっと落ち着かれていなかったはず。面倒に巻き込まれたらなんとお詫びしてよいやら。それに病気のことは自分からカムアウトするのと、誰かから一方的に暴かれたり揶揄されたりするのでは、天と地どころか天と海底ほどの差がある。

 内田さんからのお返事の第一声は、「内澤さんの身体は無事??」だった。

 なんて優しい方なのだろう。涙が出そうになる。

「私ら出版の人間じゃないですか。取材もしないで書く人なんていませんよ」

 でも万一春菊さんに取材が来たりしたら、ご迷惑おかけするかもしれない。闘病中の大変なときに本当にごめんなさい。Aのこと、絶対に許せないです。

「編集部からはまっとうに連絡が来るはずです。悪いことしてるんじゃないんだし。よっぽど振られたのが悔しいんだね。かわいそうな人。警察にがんばってもらいましょう」

 しかしいくら警察に頑張ってもらっても、違法行為は取り締まってくださるだろうけれど、Aの私への執着と憎しみを、消すことはできない。それをなんとかしないかぎり、ずっと嫌がらせが続くのではないだろうか。憂鬱だ。警察に相談したことも、あとで分かれば逆恨みするかもしれない。しかしあの写真を見て、私に偽名を使って過去を隠していることも分かってしまった今となっては、警察の関与を断つことは、難しい。Aが何もしないという保証が、信頼が、これまでも恥ずかしながらあんまりなかったけれど、一気に失せてしまった。それでもせめて私が要望した通りに、突然友人たちのところに押しかけたりせずに、事前のアポをとって、話をしてくれたら……。

※写真はイメージです ©iStock.com

 午後、Aからメッセージが入った。Aは既に島に来ていた。

〈○○(Aが私の浮気相手と思い込んだ人物。実際は同姓同名の別人)の家まできたんだけど。地図の住所が、よくわからない。どこにあるのか教えろ。〉

第1回を読む)

※続きは5月24日発売の『ストーカーとの七〇〇日戦争』(文藝春秋)でお読みください。

■内澤旬子さんからのメッセージ
本書は著者が実際に被害に遭ったストーカー事件(脅迫罪で逮捕、示談成立後不起訴処分の数カ月後にインターネット掲示板への書き込みあり、IPアドレス特定後に刑事告訴、名誉毀損等で懲役10カ月の実刑判決)の詳細です。ストーキングが依存的病態の一種であり、精神科医やカウンセラーによる専門的な治療で再犯の危険性が下がるにもかかわらず、治療につながらない現状を変えたい一心で、筆を執っています。ご理解のほど、よろしくお願いいたします。

ストーカーとの七〇〇日戦争

内澤 旬子

文藝春秋

2019年5月24日 発売