プロの将棋の強さは紙一重といわれるが……
結果は158手と、前2局よりは少なくなったものの激戦を感じさせる手数で、永瀬七段の勝利となった。
局後の感想では「終始うまく指されているような将棋だった」、「全体を通してとても大変な将棋だった」と振り返った。プロの将棋の強さは紙一重といわれる。トップ棋士であればあるほど、その差はどんどん縮まっていく。この将棋を制したのはやはりカロリーだったのか、食事にまで現れた気合だったのか。その紙一重を超える要素が、もしかしたら食事にあるのかもしれない。
「どちらが勝ち上がっても食ってやる」
この二人の対局を強く意識していた棋士がいた。タイトル保持者の高見泰地叡王である。
高見叡王はもともと棋士の食事注文に造詣が深く、その情報量と注文バリエーションでファンを喜ばせていた。
3月末にみろく庵閉店を目前にした最後の対局注文で、昼に「肉豆腐定食」と「からあげ3つ」、夜に「豚キムチうどん」「じょい豆腐」を注文した。このときは、それぞれ将棋界で話題になった代表的メニューで固めるという、なんともファン泣かせな注文をしたことでも話題になった。
そんな高見叡王がこの挑戦者決定戦第1局の翌日、千田翔太七段との対局でみろく庵の「ミックス雑炊納豆追加」と「肉生姜焼」を注文した。
これは面白い。永瀬七段と菅井七段の最近の通常メニューを一気に2つとも食べてみせたのだ。「どちらが勝ち上がっても食ってやる」といわんばかりの気合いの入りっぷりである。
普段見せる軽快なトークや笑顔の奥に潜む勝負師としての炎が、食事情報としてそこに現れていた。
今回の三番勝負は、両対局者、そして叡王含め非常に強いこだわりが感じられるシリーズとなった。