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俺の香港を守れ! 元エリート官僚とノンポリおじさんが「共に戦う理由」

現地取材シリーズ「燃えよ香港」#2

2019/06/21
note

「英国植民地時代からの公務員は信頼できるんだ」

――今回、政府庁舎の窓に内側から「反送中(逃亡犯条例改正反対)」の紙が貼られていたことも話題になりました。内心、政府の職員たちも嫌がっていたのでは?

S: 上司の方針が間違っていると感じれば反対・討論することが認められる。これは英国が残してくれた香港の公務員の素晴らしい規律で、多くの人はそれに誇りを持ってきた。正直、1997年に中国に返還されてから、徐々に大きく変わってきているのがこの点だ。現在は、「上」が決めたことは合理的な理由がなくても従わなくてはならなくなってきた。これは法治ではない。悪しき人治であり、社会の後退だよ。

――行政長官の林鄭月娥だって、英国植民地時代から公務員として叩き上げの人物ですが。

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C: そうだ。だから僕たちは当初、彼女に期待していた。前任の梁振英はビジネス界出身のとんでもないヤツだったけれど、林鄭月娥は「わかってる人」なのだろうと。英国時代からの公務員なら、もっと理性的だろうと思ったんだけどね。

罵り言葉が豊富で大喜利的なパロディを好む広東語文化圏ゆえの現象ながら、デモ現場では女性の林鄭月娥を「淋病」と呼んだり、広東語のFワード(F●ck your mother)的表現を多用したりする表現も普通に受け入れられている。ちなみに写真の貼り紙のの文言を意訳すると「淋病月娥は一家まとめて死にくされ」。強烈すぎる…… ©安田峰俊

――英国以来の体制への信頼は強そうですね。

S: 特に司法分野の人たちは、植民地時代に作られた体制や価値観のほうが優越していると考えている。僕は彼らについて信ずるに足ると思っている。

C: そうだね。見た目は香港人でも、中身は完全にイギリス人、という人たちが、まだ存在しているんだ。英国時代からの公務員は、本来は非常に信頼できる。彼らは批判的に表現すれば「港英餘孽(英領香港が残した悪しき者)」とも呼ばれるわけだけれど。