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“ギリシャ化”が鍵 性欲減退を「年代数×9」の方程式で乗り越える――ヒトは何歳までセックスできるのか?

性への「無関心」「嫌悪」が倍増する日本人

理想の回数を「方程式」で知る

 不妊カップルに多いのは、まず30代後半以上という年齢、次に結婚からの不妊期間が長いこと、そしてセックスの回数が少ない点だ。

 河野氏が見せてくれたのは、アメリカの学者が算出した「年代別のセックス回数の方程式」という目安である。これは年齢の「年代数」に9をかけるものだ。

・20代 2×9=18(10日間で8回)

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・30代 3×9=27(20日間で7回)

・40代 4×9=36(30日間で6回)

 どう考えても多すぎてさらにブレーキがかかりそうだが、河野氏は「全然多くないですよ。20代は毎日でもおかしくないし、1日に何回もできる」と言う。ただ、

「これは欧米の基準です。個人差もあり、日本人はここに示された回数の半分以上と考えても大丈夫です」

 実は、回数の多さには生物学的に意味があるという。河野氏は「ルーティンセックス」という言葉を使う。

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「本来、男性はセックスの回数を多く求めます。一つは広く自分の遺伝子を広げたいという本能的な理由です。次に、パートナーの体の中に、常に自分の精子があることを求めている。これは他人の精子が入ることを許さないという本能からきています」

 女性の本能にも、男性とは違う思惑がある。

「それは排卵日がいつ来るかは、本人にもわからないというものです。もっと良い精子が欲しいという女性の生物学的な本能が、排卵日を男に教えず、男たちの“精子戦争”を促している」

日本の不景気と少子化の関係

 男女ともにルーティンセックスを求めるのは、こうした種の保存という意味があるためだ。よって、回数が少ないのは、人間の本能に反していることになる。子づくりのために排卵日を計算して、その日だけセックスをしようという行為は、自然ではないのだ。

「人間の本能は二つあります。生存と繁殖です。日本の少子化の背景には、不景気など社会的な事情から、男性の本能が繁殖よりも生存することに力が入れられていることも関係しているでしょう」(河野氏)

 有名な統計に、イギリスのコンドームメーカーのデュレックスが26カ国、2万6000人を対象にしたセックスの回数調査がある。日本の夫婦はダントツの最下位で、年間48回。回数の少なさを論(あげつら)われるのは、余計なお世話だという気もするが、興味深いのは世界一セックス回数の多い国である。