人前でのハグ、お姫様抱っこは息子から母への最高のギフト
子育ての苦労を考えれば、「私から離れられなくなるように育てたい」と言う母親達の気持ちも、もっともなのです。昔の女性であれば、子育ての見返りが何ら無くとも黙って年老いていったのでしょうが、バブル世代は「労働には対価があって当然」と思っています。子育てという重労働をしたのだから、永遠に子供から「お母さんが一番」と愛されるべき、と思う気持ちもわかる。
そして私は、母親を人前でハグできる男子大学生を見て、母親達の計画は達成されたことを知ったのです。人前でのハグとかお姫様抱っこは、息子から母への最高のギフトであり、アンサー。
してみると、母と息子の抱擁を見て恥ずかしい気持ちになった私の方が、むしろ恥ずかしい存在なのかもしれません。ハグできる親子とは、J-POP風に言うなら「愛に臆病でない人達」。
対して私は、「母と息子」というだけで即座にAVの熟女ものに想像がワープ。……という感覚は論外としても、私の中には、母と息子に限らず、「愛情を堂々と外に出すことが恥ずかしい」というクラシックな感覚が、今もあるのです。
妻の忍従によって夫婦関係が保たれた時代
古来、日本の夫婦というものは、愛情以外のもので最初は結びつき、次第に愛や情を育んでいくというスタイルを取っていました。見合いだの紹介だの、周囲の意思で結婚が決められることが多かったのです。
結婚後に愛を育んだからといって、欧米のようにそれをのべつ確認し合わなくてはならないという感覚は、日本人にはありませんでした。主に妻の忍従によって、夫婦関係はキープされたのであり、「愛してる」と言い続けなくてもよかったのです。
子供に対する愛も同様で、「わざわざ口で言わなくてもまぁ、伝わるだろう」という感覚。
「あなたを愛しているわ、太郎」
「僕もだよ、ママ」
と言い合わなくても親子は成り立ちましたし、子供から親に対して正面切って感謝することもなかったのです。