キューバでサンタクララとトリニダーを一人で観光した後に、首都ハバナで友人2名と合流した。当時のキューバはインターネットがほとんどなかったが、友人達は旅行歴が100ヶ国を超える文字通りの百戦錬磨たちなので、ネットがなくとも集合に困ることはなかった。
翌日は5月1日、労働者の祭典メーデーがハバナで開催される。友人2名はメーデーのパレードを目当てにハバナに来た。メーデーと言えばストライキやデモを想像しがちだが、キューバのメーデーは一味違う。
見ての通りの激ユルお祭り騒ぎ。皆、自作の看板や張りぼてを持ち、談笑しながら各々好きな速度でパレードしている。キューバと同じ社会主義国の北朝鮮で見られるような一糸乱れぬ軍事パレードを想像していただけに肩透かしを食らったが、アメリカの経済制裁下とは思えぬほど楽しそうにパレードに参加している人々を見ていると、こちらも楽しくなってくる。
事件は陽気なメーデーの後に起こった
メーデーのパレードを楽しんだ後、ハバナの中心地へ戻り、ヘミングウェイが定宿として愛したホテル「アンボスムンドス」の1階にあるバーで休憩することにした。友人2名はピニャコラーダを、私は酒が飲めないのでノンアルコールのピニャコラーダがあることを確認してオーダーした。
5月のキューバは日中の気温が30℃と暑く、冷えたドリンクがパレードに参加した後の身に染みる。体が欲するがままに一気に飲み干した。すると数分後、突然体に異変が起きた。顔が真っ赤になって動悸息切れが激しくなり、意識が遠のきそうになって机に突っ伏した。ノンアルコールでオーダーしたはずのピニャコラーダにアルコールが入っていたのだ。
ピニャコラーダは甘くスッキリしたジュースのような味わいで、アルコール成分に気付くことなく一気に飲み干してしまった。そのため、元々アルコールを受け付けない私は急性アルコール中毒の一歩手前のような症状に陥ってしまった。体内に入ったアルコール成分を薄めて出さなければと、店員に水を頼んだ。