香港の抗議運動は発生から約4ヶ月目を迎えた。
私は運動初期の6月に短期間、8月末から延べ1ヶ月ほど現地入りして運動を眺めてきたが、特に9月末に入って警察・デモ隊ともに暴力がエスカレートした印象だ。今回の香港デモは「リーダーや組織がない」とされ、激化した場合の歯止めの効かなさを懸念する識者も多い。
――だが、本当に運動を統括する組織はないのだろうか?
香港デモは(日本人や欧米・中国メディアを含めて)支持派・
吉野家、元気寿司も……「仕事」のような破壊行為
事実、特に大規模な衝突の現場では、デモ隊の勇武派(警官隊との衝突を辞さない過激グループ)はかなり統制された動きを見せている。デモ隊が常用するメッセージシステムTelegramの公式チャンネルにアップされた前線部の分掌図を見ると、最前線で火炎瓶や石を投擲する攻撃部隊、催涙弾を無効化する防御部隊など、役割分担も整っているようだ。
また8月末ごろからは衝突の正面戦線とは別個に、数十人程度の遊撃部隊が周囲の地下鉄駅や民間店舗への落書きや破壊・放火を繰り返すようになったが、こちらの動きも非常に統制されている。怒りのあまり思わず壊した、という感じではなく、彼らは計画的にターゲットを選定して「仕事」をおこなっているようだ。
例えば、遊撃部隊による銀行襲撃は中国系銀行のほかに香港の地場
こうした統制は前線部隊だけではない。たとえば裏方役としては「哨兵(偵察)」部隊が存在し、Telegramのチャンネル(LINEでいうグループに相当)内で警察の動きを逐一報告し続けている。報告される情報はかなり詳細かつ正確で、個人がたまたま目の前で見た光景を投稿しているような自由参加的なムードは感じられない。
すなわち東京で例えるなら、「新宿の衝突現場で放水車登場」「北千住駅構内で機動隊約20人を確認」「蒲田付近第一京浜にてパトカー5台都心向けに走る」「八王子駅前で警官と地元住民が口論」といった都内各地の警察の動向情報が、一定のフォーマットに従った投稿形式でほとんど粗漏なく同時に書き込まれ続けているのである。