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偵察部隊幹部との接触に成功

 これを不思議に感じた私は、9月末に哨兵の担当者「L」(仮名)に直接取材を試みた。Lは後述する哨兵コミュニティの上層部と接触できるレベルの位置におり、作戦に対して一定の意思の反映が可能だとみられる。

 彼は22歳の男性ホワイトカラーで、話し方は論理的だ。デモ隊の末端には、メディアをおそれて極端に慎重に取材を受ける人や、運動の教条的なスローガンだけを繰り返すような人もいるのだが、Lは異なる。

9月29日、湾仔付近で起きたデモ隊と警官隊の衝突現場。デモ隊側の前線はゴミ箱を倒して即席バリケードを作ったうえで、数人〜十数人ごとに密集隊形を作って傘で催涙弾を防衛している ©安田峰俊

 私が彼らの運動の手法に全面的には賛成していないと告げたにもかかわらず、Lは「取材を受けることも対外宣伝の一部だ。双方がメリットを得る形を望む」と話すなど、したたかに海外メディアを利用するクレバーな視点を持った人物だった。以下に対談形式でインタビュー内容を紹介しよう。

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(※取材は9月30日、九龍半島東部のホテルの室内で普通話(標準中国語)を用いておこなった。また、Lの発言部分は本人の言葉をできるだけ忠実に伝えたが、私の質問部分は読者の利便性を考えて言葉を補った。)

「『就業証明』を確認してスパイの侵入を防ぐ」

――哨兵部隊が成立した経緯について教えて下さい。

L: 自分のケースについてしか話せないことを先に断っておく。(最初に100万人規模の抗議デモが発生し、夜間に一部参加者が警官隊と衝突した)6月9日夜、金鐘の立法会(国会議事堂に相当)から湾仔方面に向けて警官に追い立てられている学生がいたんだ。そこで、僕を含む有志がTelegramのチャンネルを作成して警官が少ない場所の情報を共有し、逃亡経路の情報を共有するようになった。これが哨兵部隊の契機だ。

――なるほど。確かにTelegram上にはその後身かもしれない哨兵チャンネルが複数あり、私も参考にしています。ただ、外部の人間でも閲覧や投稿が可能ということは、警察や反対派の市民がデマを投稿する可能性はありませんか。本当は警官だらけの路地を「安全な場所」として誘導するような。

L: あなたが見ているような誰でも参加できるオープンなチャンネルは「公海」というんだ。こちらはもちろん、警察も見ている。なので、これ以外に哨兵任務に就いている人間だけの小組(ミニグループ)のチャンネルが別個にある。こちらはクローズドだ。

Telegramの哨兵チャンネルのひとつに投稿されている警官の動向情報。場所をハッシュタグで示し、4文字の数字で時間を記載、その後に状況を淡々と報告するフォーマットが存在することがわかる。なお、このチャンネルがLの部隊と関係があるとは限らない

――哨兵任務に就くメンバーはどうやって集めるんですか?

L: まず、「公海」で希望者を募る。その希望者から、就業証明を送ってもらい警察関係者ではないことを確認したうえで仲間に入れる。現時点まで約4ヶ月が経ったが、スパイの侵入は確認していない。