警察をあざむく「高度な戦略」は誰が立てているのか
事実、統括組織Xの存在を疑わせる要素は少なくない。
また、毎月のデモの日程や場所は、おおむね前月末ごろ~数日前には告知されている。デモごとに「光復元朗(元朗を取り戻せ)」や「警察の暴力反対」などのコンセプトも設定されているうえ、そうした各コンセプトに異論を唱える声はほとんど聞かれない。
そもそも、当初は逃亡犯条例改正案への反対運動だった香港デモは、7月ごろから警察の暴力行為への独立調査委員会設置などを求める「五大要求」の貫徹要求運動に変質したが、「五大要求」の決定や、内容の一般参加者への浸透は異常にスムーズだった。不動産価格の引き下げや中国人新移民の流入制限といった、一部の参加者との親和性が強い主張を要求に含めてくれと抗議する声も、ほとんど聞かれない。
異論が少ないのは「不譴責(他者を批判しない)」「不割席(分裂しない)」といったスローガンがデモ参加者に共有されているからだろう。だが、そもそもこのスローガンがなぜすんなり共有されたのかも不思議である。
主張の統一、大規模なデモや集会の全体戦略や日程・場所の策定、海外の反中国勢力や香港内のシンパの富豪などから大量に流れ込んでいるとみられる活動資金の管理といった高度な意思決定は、統括組織Xの内部でかなり慎重に決められているのではないかと思える。
「2ちゃんねるのオフ会」「アノニマス」形式?
もっとも、統括組織Xは仮に存在したとしても、既存の政治運動団体や活動家とはほぼ無関係だろう。日本のメディアで「香港デモのリーダー」としてよく取り上げられているジョシュア・ウォンや周庭などの顔ぶれも、おそらく加わっていないはずだ。
以下、哨兵や文宣の組織構造を見た上での私の想像を書く。香港デ
すなわち、互いに顔や名前も知らない究極のコアメンバーたち(一
それはさておき、ビラの内容やTelegramへの投稿、果てはSNS上などでの日本語での情報発信や、吉野家の店舗の破壊行為にいたるまで、香港デモで見られるさまざまな行動が、慎重な検討と作戦立案のうえでおこなわれていることはほぼ間違いない。
猛烈な燃え上がりを見せている香港デモで、数十万人から数百万人の参加者を動かすシステムはどうなっているのか。デモのイデオロギーそれ自体以上に、なかなかミステリアスで魅力的な話だと思っている。